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文献詳細

雑誌文献

検査と技術5巻7号

1977年07月発行

文献概要

測定法の基礎理論 なぜこうなるの?

グラム染色機序の細胞構造学的考察

著者: 橋本雅一1

所属機関: 1女子栄養大

ページ範囲:P.497 - P.501

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グラム染色の発見
 2種類以上の色素液を用いるとか,あるいは2種類以上の色素を含む液を用い,色素に対する親和性の違いによって細菌の形態もしくは構造を選択的に染め分けようとする操作が特殊染色または分別染色と呼ばれる方法で,この中で臨床細菌学で細菌群の鑑別に最も頻繁に用いられる染色法が,コペンハーゲン出身の内科医であったHans Christian Joachim Gramが実験的に発見したグラム染色(Gram stain)である.
 1880年以降Kochをはじめ多くの学者によって種々の病原細菌が相次いで発見された.その初期のころ,肺炎の病原体の発見をめぐって多くの学者がしのぎをけずっていたが,ベルリン国立総合病院のCarl Friedländerもその一人で,クループ性肺炎の患者から分離された球菌について精力的な研究をすすめていた.当時Gramもこの病院で組織学的研究に従事していたが,KochとEhrlichが発見した結核菌の鑑別染色法にヒントを得て,腎の組織標本で核を青く,尿円柱を褐色に染あ分けてみようというのが彼の当初の目的だった.その実験中,まずアニリン・ゲンチアナ紫で染め,ヨウ素・ヨウ化カリウムの混合液で処理したあとの標本にアルコールを作用させると,紫色の色素が脱色されるということに気がついたのが,この染色法の発見に至る偶然のきっかけとなった.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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