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文献詳細

雑誌文献

検査と技術50巻5号

2022年05月発行

文献概要

トピックス

CAR-T細胞療法:その現状

著者: 山﨑理絵1 田野崎隆二1

所属機関: 1慶應義塾大学病院輸血・細胞療法センター

ページ範囲:P.496 - P.499

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キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞(CAR-T細胞)療法の概要

 2012年に米国のフィラデルフィア小児病院で,2回の治療中再発をきたした小児急性リンパ芽球性白血病(acute lymphoblastic leukemia:ALL)の患者にCD19を標的としたキメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)遺伝子導入T細胞(CAR-T細胞)療法が施行され,その後長期にわたって寛解を維持したことが報道されて以降,血液腫瘍に対する“CAR-T細胞療法”は一気に世界の注目を集めた.

 CAR-T細胞療法は,遺伝子改変した人工T細胞を体外で大量に作製し患者に輸注する,遺伝子改変T細胞輸注療法である.CARとは,T細胞受容体(T cell receptor:TCR)の細胞内ドメインと抗体の抗原結合部位を遺伝子組み換え技術によって結合させた受容体で(図1),これをT細胞に導入したものをCAR-T細胞と呼ぶ.CAR-T細胞は癌細胞上の抗原を認識後,共刺激シグナルを介して標的癌細胞を活性化しアポトーシスを誘導する.一部はメモリーT細胞へと分化し,体内に長時間残存し,持続的な抗腫瘍効果を発揮する.つまり,CAR-T細胞療法は,現在の悪性腫瘍に対する免疫療法の主流である,抗体療法と細胞傷害性T細胞(cytotoxic T cell:CTL)による治療を組み合わせた治療といえる.抗体療法では反復投与が必要となるが,CAR-T細胞は体内で増殖できるため,持続的効果を期待できる.標的分子の認識がヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)に依存しないため,HLAの発現低下により免疫機構から逃れている腫瘍細胞に対しても有効である.

参考文献

1)臨床検査技師等に関する法律施行規則第十条の二第三号.
1)Park JH, Geyer MB, Brentjens RJ : CD19-targeted CAR T-cell therapeutics for hematologic malignancies : interpreting clinical outcomes to date. Blood 127:3312-3320,2016
2)赤塚美樹:CAR-T細胞療法の基礎と今後の臨床展開.日輸血細胞治療会誌 65:851-857,2019
3)齋藤章治,中沢洋三:CAR-T療法の現状と今後の展望.信州医誌 66:425-433,2018
4)平松英文,加藤格,梅田雄嗣,他:急性リンパ性白血病に対するCAR-T細胞療法.日造血細胞移植会誌 9:93-99,2020

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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