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文献詳細

雑誌文献

検査と技術50巻6号

2022年06月発行

文献概要

FOCUS

心臓移植におけるエベロリムスの役割

著者: 木村祐樹1 奥村貴裕1 室原豊明1

所属機関: 1名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学

ページ範囲:P.594 - P.597

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はじめに

 平成21(2009)年に「臓器の移植に関する法律(臓器移植法)」が改正されて以降,わが国における心臓移植の件数は年々増加し,2019年度には年間79例に到達した.コロナ禍においてもドナー患者・家族のご協力や日本臓器移植ネットワークをはじめとした関連団体・施設の努力により,2020年度も約50例の心臓移植を行うことができており,心臓移植は重症心不全患者に対する確立した治療となっている.

 日本での心臓移植の成績は10年生存率89.3%と世界と比較しても極めて良好である1).心臓移植後の死因として,移植後早期は拒絶反応と感染症が重要であるが,遠隔期には悪性腫瘍,移植心冠動脈病変,腎不全の割合が増加してくる(図1)2).長期の生存率を維持するためには,急性期だけではなく遠隔期の合併症を意識した免疫抑制療法が必要である.

 この課題を解決するうえで,エベロリムスは非常に重要な存在となっている.2007年1月に承認されたエベロリムスは,細胞質内のFK506結合蛋白と複合体を形成し,哺乳類ラパマイシン標的蛋白質(mammalian target of rapamycin:mTOR)に結合することにより,造血細胞(T細胞,B細胞),血管平滑筋細胞,酵母などで細胞周期をG1期で停止させることで効果を発揮する1).エベロリムスにはカルシニューリン阻害薬による腎機能障害の抑制に加え,移植心冠動脈病変の抑制や抗腫瘍効果など特有な効果が報告されている3).そのため,国立循環器病研究センターの報告では心臓移植後1年において65%の患者でエベロリムスが併用されており4),当院においても67%(6/9例)の患者でエベロリムスの併用を行っている.

 本稿では,心臓移植におけるエベロリムスの使用方法や役割,問題点に関して概説する.

参考文献

1)日本循環器学会,日本心臓病学会,日本心臓血管外科学会,他:2016年版 心臓移植に関する提言(https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2016_isobe_h.pdf)(2022年2月8日アクセス)
2)Khush KK, Cherikh WS, Chambers DC, et al : The International Thoracic Organ Transplant Registry of the International Society for Heart and Lung Transplantation : thirty-fifth adult heart transplantation report-2018 ; focus theme: multiorgan transplantation. J Heart Lung Transplant 37:1155-1168,2018
3)Hirt SW,Bara C,Barten MJ,et al : Everolimus in heart transplantation: an update.J Transplant 2013:683964,2013
4)Kimura Y, Yanase M, Mochizuki H, et al : De novo malignancy in heart transplant recipients : A single center experience in Japan. J Cardiol 73:255-261,2019
5)松田暉(監),布田伸一,福嶌教偉(編):心臓移植.丸善出版,pp210-217,2012
6)Barten MJ, Hirt SW, Garbade J, et al : Comparing everolimus-based immunosuppression with reduction or withdrawal of calcineurin inhibitor reduction from six months after heart transplantation : the randomized MANDELA study. Am J Transplant 19:3006-3017,2019

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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