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文献詳細

雑誌文献

検査と技術50巻6号

2022年06月発行

文献概要

臨床医からの質問に答える

アメーバ性虫垂炎の診断のポイントを教えてください.

著者: 渡辺恒二1

所属機関: 1国立国際医療研究センターエイズ治療・研究開発センター

ページ範囲:P.628 - P.631

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赤痢アメーバ症とアメーバ性虫垂炎

 赤痢アメーバ症は,赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)による感染症(腸管寄生虫症)である.赤痢アメーバは,体外環境中でも長期間安定しているシスト(囊子)型と,ヒトの体内で大腸組織を破壊する栄養型の2つの形態を有する.外部環境もしくは他の感染者から直接的に,シスト型赤痢アメーバを経口的に摂取することにより感染伝播が起こる.経口摂取されたシスト型赤痢アメーバは,胃や小腸などの強酸または強アルカリの環境を通過し,大腸に達すると栄養型赤痢アメーバに脱嚢する.栄養型赤痢アメーバの表面にある接着因子(レクチン)を介して,ヒトの大腸粘膜表面のムチンに接着することで感染が成立する.

 大腸に感染を起こした栄養型赤痢アメーバは粘膜下組織に侵入し,下痢や血便などの腸炎(アメーバ性腸炎),血管への浸潤が起こると血流を介して肝膿瘍(アメーバ性肝膿瘍)などの病気を引き起こす.アメーバ性腸炎やアメーバ性肝膿瘍など,赤痢アメーバによる侵襲性感染症をアメーバ赤痢と呼ぶ(図1).

参考文献

1)Kobayashi T, Watanabe K, Yano H, et al : Underestimated amoebic appendicitis among HIV-1-infected individuals in Japan. J Clin Microbiol 55:313-320,2016
1)渡辺恒二,柳川泰昭,脇本優司:アメーバ赤痢:性感染症としての拡大と国内診療上の問題点について.日エイズ会誌 21:132-142,2019
2)Otan E, Akbulut S, Kayaalp C : Amebic acute appendicitis : systematic review of 174 cases. World J Surg 37:2061-2073,2013
3)小林泰一郎,渡辺恒二:アメーバ性虫垂炎.IASR 37:245-246,2016(https://www.niid.go.jp/niid/ja/typhi-m/iasr-reference/2351-related-articles/related-articles-442/6946-442r04.html)(2022年3月11日アクセス)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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