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文献詳細

雑誌文献

検査と技術50巻8号

2022年08月発行

文献概要

臨床検査のピットフォール

見逃してはいけない!FDP値よりもD-dimer値が高くなる逆転乖離の現象—非特異反応による逆転乖離はメーカー各社の測定試薬によって異なる

著者: 叶内和範1 佐藤牧子1 田村圭祐1 森兼啓太1

所属機関: 1山形大学医学部附属病院検査部

ページ範囲:P.842 - P.847

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フィブリン・フィブリノゲン分解産物(FDP)とD-dimerの測定方法

 フィブリノゲン分解産物やフィブリン・フィブリノゲン分解産物(fibrin and fibrinogen degradation products:FDP)とD-ダイマー(D-dimer)測定は凝固線溶亢進状態を反映する検査法である.FDPはフィブリノゲンを主体蛋白とするプラスミンによる分解産物の総称であり,一次線溶と二次線溶の動態を反映している.そして,FDPは同一構造を兼ね備え,分子構造が異なる類似性のある混合分画の総称で,多様性に富んだ混合物である1).この分解産物を抗原決定基(エピトープ)として認識する複数のモノクローナル抗体を試薬に用いてFDP値として測定している.

 D-dimerは,フィブリノゲンがトロンビンにより分解されてフィブリンとなると,あるフィブリン1分子由来のEドメインと別のフィブリン2分子のDドメインが結合してDD/E構造を形成し,さらに分子内のγ鎖同士またα鎖同士の架橋結合が起こる.この隣り合うフィブリン分子のDドメイン2つのγ鎖が端々結合してできたダイマーの新規エピトープを認識するモノクローナル抗体を用いて,この架橋化フィブリン断片分画を検出してD-dimerとして測定している2).FDPはフィブリノゲンの早期の一次線溶亢進の動態を示しているといわれている3).一方で,D-dimerはフィブリン形成の根拠となる二次線溶の動態を示している.

参考文献

1)福武勝幸:FDP/D dimerの標準化.日血栓止血会誌 27:653-658,2016
2)奥田昌宏,和田英夫:Dダイマー測定法の原理と試薬キットに関する技術紹介—文献による考察.日血栓止血会誌 17:353-360,2006
3)香川和彦:FDP-Dダイマー測定の現状と課題.日血栓止血会誌 17:68-73,2006
4)内場光浩:血液凝固検査の信頼性を考えるFDP/D-ダイマー.日検血会誌 15:108-116,2014
5)松本剛,和田英夫:DIC診断におけるFDP/Dダイマーの有用性と限界.日血栓止血会誌 19:397-401,2008
6)Newman DJ, Henneberry H, Prince CP : Particle enhanced light scattering immunoassay. Ann Clin Biochem 29:22-42,1992
7)大竹晧子,加藤象次郎:免疫学的測定法における干渉.検と技 25:207-213,1997
8)田村圭祐,佐藤牧子,叶内和範,他:非特異反応物質の影響により,Dダイマーが偽高値となった1症例.山形医学検査 3,2020(投稿中)
9)三好雅士,松田定信,井上千尋,他:Dダイマー・FDPの逆転現象に対しDTTが有用であった1症例.医学検査 63:86-89,2014

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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