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臨床検査のピットフォール
見逃してはいけない!FDP値よりもD-dimer値が高くなる逆転乖離の現象—非特異反応による逆転乖離はメーカー各社の測定試薬によって異なる
著者: 叶内和範1 佐藤牧子1 田村圭祐1 森兼啓太1
所属機関: 1山形大学医学部附属病院検査部
ページ範囲:P.842 - P.847
文献購入ページに移動フィブリノゲン分解産物やフィブリン・フィブリノゲン分解産物(fibrin and fibrinogen degradation products:FDP)とD-ダイマー(D-dimer)測定は凝固線溶亢進状態を反映する検査法である.FDPはフィブリノゲンを主体蛋白とするプラスミンによる分解産物の総称であり,一次線溶と二次線溶の動態を反映している.そして,FDPは同一構造を兼ね備え,分子構造が異なる類似性のある混合分画の総称で,多様性に富んだ混合物である1).この分解産物を抗原決定基(エピトープ)として認識する複数のモノクローナル抗体を試薬に用いてFDP値として測定している.
D-dimerは,フィブリノゲンがトロンビンにより分解されてフィブリンとなると,あるフィブリン1分子由来のEドメインと別のフィブリン2分子のDドメインが結合してDD/E構造を形成し,さらに分子内のγ鎖同士またα鎖同士の架橋結合が起こる.この隣り合うフィブリン分子のDドメイン2つのγ鎖が端々結合してできたダイマーの新規エピトープを認識するモノクローナル抗体を用いて,この架橋化フィブリン断片分画を検出してD-dimerとして測定している2).FDPはフィブリノゲンの早期の一次線溶亢進の動態を示しているといわれている3).一方で,D-dimerはフィブリン形成の根拠となる二次線溶の動態を示している.
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