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文献詳細

雑誌文献

検査と技術50巻8号

2022年08月発行

文献概要

臨床医からの質問に答える

手術が長引き,病理検体の受付時間に間に合わない場合,摘出した組織と腹水はどうすればよいですか?

著者: 川畑真子1 小倉瑛茄1 小山芳徳1 大塚喜人1

所属機関: 1医療法人鉄蕉会亀田総合病院臨床検査部

ページ範囲:P.854 - P.858

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はじめに

 臨床検査のなかで緊急を要する項目は,電解質,血算,血液ガス,クレアチニンやアミラーゼなどの臨床化学検査,輸血検査,グラム(Gram)染色など,手術を含む緊急の治療を必要とする項目に限られる.そのため,検査結果の報告までに時間を要する検査は緊急検査に適していない.この意味では,病理検査全体が緊急検査の適応とは言い難く,夜間や通常勤務時間外に提出された病理検体のほとんどは翌日への引き継ぎ対象となる.

 病理検査を対象とした検体としては,生検検体や摘出された臓器などのホルマリン固定された組織診用検体と,胸水,腹水,尿,髄液などの細胞診用検体の2つに大きく分けられ,細胞診用検体は,一般検査や生化学検査,微生物検査などの検体と一緒に時間を問わず臨床検査室に提出されることがある.そのため,検体検査部門へ検体の取り扱いについて問い合わせがくることがあり,病理検査部門以外の臨床検査技師でも検体の保存方法を習熟しておく必要がある.一般的に組織診用検体については検体摘出後速やかにホルマリン固定を行えば室温保存でよいとされている.しかし,細胞診用検体の保存条件については文献ごとにさまざまな記述があり,特に体腔液に関しては,抗凝固剤添加の有無など一律化されていないのが現状である.

 そこで本稿では,細胞診検査に提出された穿刺体腔液を中心に,保存条件の不備により起こりうる形態学的・遺伝子学的検査への影響も交えながら,適切な保存条件に関して解説していく.

参考文献

1)矢野正生,下村弘治:A.体腔液 3.臨床化学的検査.Med Technol 33:1379-1389,2005
2)細胞検査士会(編):細胞診標本作製マニュアル(体腔液).細胞検査士会,2008
3)日本臨床細胞学会ゲノム診療時代における細胞診のあり方検討ワーキンググループ:がんゲノム診療における細胞検体の取扱い指針 第1.0版.日本臨床細胞学会,2021

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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