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文献詳細

雑誌文献

検査と技術51巻11号

2023年11月発行

文献概要

書評

神経病理インデックス 第2版 フリーアクセス

著者: 柴原純二1

所属機関: 1杏林大・病理学

ページ範囲:P.1245 - P.1245

通読可能な分量に神経病理のエッセンスを凝縮

 病理医が慢性的に不足するわが国にあって,多くの病理医はgeneral pathologistとして諸臓器に向き合うことを余儀なくされているが,新規知見が加速度的に蓄積される現代において,各領域の知識を十全に備えることは年々難しくなってきている.特に神経病理は,その複雑な解剖,多彩な組織構築や構成細胞,独特の染色法の数々からして,多くの病理医が苦手とするところであるが,もとより疾患が多様である上に,概念の変遷があり,新規病型の提唱や疾患の細分化が進んでいることが,習得をより困難なものとしている.また,神経病理の特徴の一つは,病理解剖でなければ経験できない疾患が多いことであるが,新型コロナウイルスの流行により解剖の機会の減少に拍車がかかり,経験を積むことが一層困難となりつつあることも,神経病理を学ぶ上での大きな障壁となっている.

 この度改訂された『神経病理インデックス』は,こうした難点を孕む神経病理の学習や診断の実践において大きな手助けとなってくれる1冊であり,定評のあった旧版から実用性がさらに増した印象である.表紙イラストも魅力的な本書をひとたび開けば,美麗な肉眼・組織写真の数々,理解を促進する豊富なイラスト,正常組織や種々の疾患についての簡潔明瞭な解説に夢中となってしまうであろう.私見では現状で最も優れた神経病理の教科書と言っても過言ではなく,母国語でこのような良書に触れられることに幸せを感じずにはいられない.通読可能な分量でありながら,エッセンスは漏れなく盛り込まれているため,病理学や脳神経内科学を研修中の医師や医学生を含む初学者にまずはお薦めしたい.また,経験豊富ながら神経病理は敬遠しがちな一般の病理医にとっても,神経病理の最新を網羅的に知ることができる本書は一読の価値がある.「インデックス」の名が示す通り,辞書的な活用ももちろん可能である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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