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文献詳細

雑誌文献

検査と技術51巻2号

2023年02月発行

文献概要

FOCUS

感染対策に必要な消毒薬の知識

著者: 戸高玲子1 芳賀慧1 片山和彦1

所属機関: 1北里大学大村智記念研究所ウイルス感染制御学

ページ範囲:P.130 - P.132

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はじめに

 病原体による感染症の予防または拡大を防ぐためには,手指の消毒や生活環境中で人が触れるものの消毒は不可欠である.さらに医療機関においては,院内感染防止のために診療や検査に使用した医療機器・器具類の消毒,ならびに院内環境の消毒などが極めて重要であると考えられる.病原体には細菌やウイルス,真菌などが挙げられるが,本稿では特にウイルス感染症の予防のために役立つ効果的なウイルス消毒法について記述する.

 現在,ウイルス感染症の拡大防止のための消毒薬として多く用いられているのは,エタノールと次亜塩素酸ナトリウム製剤である.ウイルスのなかで,エンベロープといわれる脂質二重膜からなる外膜に包まれた構造を持つインフルエンザウイルスやC型肝炎ウイルスなどには,エタノールやイソプロピルアルコールなど脱脂作用を持つ成分を主成分とした消毒剤が効果的である.一方で,ヒトに感染するノロウイルス(ヒトノロウイルス)やアデノウイルス,ロタウイルスといったエンベロープを持たないウイルスなどの殺滅には次亜塩素酸ナトリウム水溶液が有効であるが,どちらの消毒薬も,適切な濃度で使用しなければその効果が不十分な場合があり注意が必要である.本稿ではそれぞれの消毒効果について述べるとともに,市販の洗剤などに含まれる界面活性剤のウイルス不活化効果についても記述する.

参考文献

1)戸高玲子,芳賀慧,澤田成史,他:新型コロナウイルスに対する消毒薬の効果.感染制御と予防衛生 4:30-38,2020
2)Wigginton KR, Kohn T : Virus disinfection mechanisms : the role of virus composition, structure, and function. Curr Opin Virol 2:84-89,2012
3)戸高玲子,藤本陽,芳賀慧,他:ヒト腸管オルガノイドを用いた市販アルコール系製品のヒトノロウイルスの不活化効果の評価.感染制御と予防衛生 5:98-106,2021
4)Costantini V, Morantz EK, Browne H, et al : Human Norovirus Replication in Human Intestinal Enteroids as Model to Evaluate Virus Inactivation. Emerg Infect Dis 24:1453-1464,2018
5)独立行政法人 製品評価技術基盤機構:有効な界面活性剤を含有するものとして事業者から申告された製品リスト 2021年10月31日版.(https://www.nite.go.jp/data/000129073.pdf)(2022年11月12日アクセス)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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