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クロウ・深瀬(POEMS)症候群とVEGF
著者: 橋口照人1
所属機関: 1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科血管代謝病態解析学分野
ページ範囲:P.634 - P.636
文献購入ページに移動はじめに
クロウ・深瀬(POEMS)症候群は診断の初期より血清VEGF濃度の著しく上昇する症候群である1).わが国における発生頻度は10万人当たり0.3人とされる2).多発神経炎,浮腫,肝脾腫などの臓器腫大,内分泌異常,色素沈着,剛毛,血管腫などの皮膚症状を主徴とする特異な症候群であり骨病変およびMタンパクを伴うことが多い.本症候群の特異的な臨床症状のなかで浮腫は初発症状として多発神経炎に次いで最も頻度が高い.この浮腫は時に胸水,腹水などを伴う全身性浮腫でありsystemic capillary leak syndromeとして血管透過性因子の存在が想定されていた.本症候群においては特徴的症候の他に持続的凝固亢進状態の存在が知られ,虚血性微小血管障害あるいは急性動脈閉塞を高率に合併する3).
本症候群においては同一患者の血清VEGFが血漿VEGFに比べ著しく高値であり,異常高値を示す血清VEGFは主に血小板由来である.VEGFは骨髄あるいはリンパ節にて増殖した異常な形質細胞により産生されると推測されるが血小板に蓄積される機序は明らかではない.血小板の血管内皮細胞上への粘着凝集により放出されたVEGFの局所濃度は著しく高まり,その生理活性(血管透過性亢進作用,血管新生作用)を過剰発現させると推測される4).本症候群は指定難病16に指定5)されている.
クロウ・深瀬(POEMS)症候群は診断の初期より血清VEGF濃度の著しく上昇する症候群である1).わが国における発生頻度は10万人当たり0.3人とされる2).多発神経炎,浮腫,肝脾腫などの臓器腫大,内分泌異常,色素沈着,剛毛,血管腫などの皮膚症状を主徴とする特異な症候群であり骨病変およびMタンパクを伴うことが多い.本症候群の特異的な臨床症状のなかで浮腫は初発症状として多発神経炎に次いで最も頻度が高い.この浮腫は時に胸水,腹水などを伴う全身性浮腫でありsystemic capillary leak syndromeとして血管透過性因子の存在が想定されていた.本症候群においては特徴的症候の他に持続的凝固亢進状態の存在が知られ,虚血性微小血管障害あるいは急性動脈閉塞を高率に合併する3).
本症候群においては同一患者の血清VEGFが血漿VEGFに比べ著しく高値であり,異常高値を示す血清VEGFは主に血小板由来である.VEGFは骨髄あるいはリンパ節にて増殖した異常な形質細胞により産生されると推測されるが血小板に蓄積される機序は明らかではない.血小板の血管内皮細胞上への粘着凝集により放出されたVEGFの局所濃度は著しく高まり,その生理活性(血管透過性亢進作用,血管新生作用)を過剰発現させると推測される4).本症候群は指定難病16に指定5)されている.
参考文献
1)Watanabe O, et al. Greatly raised vascular endothelial growth factor (VEGF) in POEMS syndrome. Lancet 1996; 347: 702.
2)Suichi T, et al. Prevalence, clinical profiles, and prognosis of POEMS syndrome in Japanese nationwide survey. Neurology 2019; 93: e975-e983.
3)Lesprit P, et al. Acute arterial obliteration: a new feature of the POEMS syndrome? Medicine (Baltimore) 1996; 75: 226-232
4)Hashiguchi T, et al. Highly concentrated vascular endothelial growth factor in platelets in Crow-Fukase syndrome. Muscle Nerve. 2000; 23: 1051-1056.
5)難病情報センター.クロウ・深瀬症候群(指定難病16). https://www.nanbyou.or.jp/entry/82(2023年3月28日アクセス)
6)Tokashiki T, et al. Predictive value of serial platelet count and VEGF determination for the management of DIC in the Crow-Fukase (POEMS) syndrome. Intern Med. 2003; 42: 1240-1243.
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