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文献詳細

雑誌文献

検査と技術51巻7号

2023年07月発行

文献概要

トピックス

認知症の体液バイオマーカー—アルツハイマー病を中心に

著者: 山田正仁1

所属機関: 1国家公務員共済組合連合会 九段坂病院内科(脳神経内科)

ページ範囲:P.760 - P.763

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はじめに

 社会の超高齢化に伴い,認知症の人は急増している.わが国では高齢者の15%以上が認知症を有するものと考えられる.認知症の原因にはアルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD),血管性認知症,レビー小体型認知症,前頭側頭型認知症など,さまざまな疾患があるが,ADが約3分の2を占める.

 ADをはじめとする認知症疾患の確定診断は,脳の病理学的所見による.最近のバイオマーカーの進歩により,生検や剖検により脳を直接見ることなく,脳病理を推定できるようになってきた.それらには画像バイオマーカーと体液バイオマーカーが含まれる.画像バイオマーカーでは脳病理をイメージングする陽電子放出断層撮影(positron emission tomography:PET)が,体液バイオマーカーでは脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)バイオマーカーが臨床応用され,さらに,血液バイオマーカーの開発が進んでいる.

 ADの脳病理は,アミロイドβタンパク質(amyloid β protein:Aβ,老人斑)および異常リン酸化タウタンパク質(phosphorylated tau:p-tau)の蓄積(神経原線維変化,他)を特徴とする(図1).ADの病変形成過程(仮説)と,それを検出する画像検査やCSF検査を図2に示す.

 これまで認知症は臨床症状を軸に理解され診断されてきたが,バイオマーカーに基づき病態・病理を診断し,それを標的とした治療〔疾患修飾療法(disease-modifying therapy:DMT)〕へと結びつけていく時代が始まった.本稿ではADに焦点を当て,CSF・血液バイオマーカーについて概説する.

参考文献

1)厚生労働省科学研究費研究班(研究代表者:池内健).認知症に関する脳脊髄液・血液バイオマーカーの適正使用指針 第1版.2021年3月31日.https://www.neurology-jp.org/guidelinem/pdf/dementia_biomarker.pdf(2023年4月13日アクセス)
2)Shaw LM, et al. Appropriate use criteria for lumbar puncture and cerebrospinal fluid testing in the diagnosis of Alzheimer's disease. Alzheimers Dement. 2018; 14: 1505-1521.
3)Morinaga A, et al. A comparison of the diagnostic sensitivity of MRI, CBF-SPECT, FDG-PET and cerebrospinal fluid biomarkers for detecting Alzheimer's disease in a memory clinic. Dement Geriatr Cogn Disord. 2010; 30: 285-292.
4)Hansson O, et al. The Alzheimer's Association appropriate use recommendations for blood biomarkers in Alzheimer's disease. Alzheimers Dement. 2022; 18: 2669-2686.
5)Nakamura A, et al. High performance plasma amyloid-β biomarkers for Alzheimer's disease. Nature 2018; 554: 249-254.
6)Hampel H, et al. State-of-the-art of lumbar puncture and its place in the journey of patients with Alzheimer's disease. Alzheimers Dement. 2022; 18: 159-177.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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