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増大号 匠から学ぶ 血栓止血検査ガイド 1章 概論
一次止血による止血機構
著者: 矢冨裕1
所属機関: 1国際医療福祉大学大学院
ページ範囲:P.892 - P.897
文献購入ページに移動はじめに
人類の歴史は,感染症との闘いの歴史であったとよく言われる.人類は,その闘いの過程で,精緻な免疫能を獲得し,感染症に立ち向かってきた.同じように,人類の歴史は怪我との闘いの歴史であったとも言える.
人体においては,やはり精緻な仕組みで血栓が形成されるが,これは,長い歴史において,人類が生存のために獲得したものと考えられる.つまり,平時には血管内では血栓が生じないで体内循環が維持される一方,怪我をして出血した場合には局所で止血栓が形成され,われわれの体からの失血が防がれるわけである.本来の生理的過程では,血管内では血栓ができず,血管外の出血巣で止血栓が形成されるべきところが,病的な場合にはこの逆,つまり血管内で血栓ができ,血管外に出血しても止血栓ができない.このように,血管内で血栓ができるのが血栓性疾患(血栓症)であり,血管外に出血しても止血栓ができないのが出血性疾患である.本稿では,生理的止血機構とその破綻による出血に関して記述するが,そのなかでも初期の止血栓形成,つまり,一次止血を中心に概説する.
人類の歴史は,感染症との闘いの歴史であったとよく言われる.人類は,その闘いの過程で,精緻な免疫能を獲得し,感染症に立ち向かってきた.同じように,人類の歴史は怪我との闘いの歴史であったとも言える.
人体においては,やはり精緻な仕組みで血栓が形成されるが,これは,長い歴史において,人類が生存のために獲得したものと考えられる.つまり,平時には血管内では血栓が生じないで体内循環が維持される一方,怪我をして出血した場合には局所で止血栓が形成され,われわれの体からの失血が防がれるわけである.本来の生理的過程では,血管内では血栓ができず,血管外の出血巣で止血栓が形成されるべきところが,病的な場合にはこの逆,つまり血管内で血栓ができ,血管外に出血しても止血栓ができない.このように,血管内で血栓ができるのが血栓性疾患(血栓症)であり,血管外に出血しても止血栓ができないのが出血性疾患である.本稿では,生理的止血機構とその破綻による出血に関して記述するが,そのなかでも初期の止血栓形成,つまり,一次止血を中心に概説する.
参考文献
1)矢冨裕.第5章 血栓・止血関連検査.金井正光(監),奥村伸生,他(編).臨床検査法提要 改訂第35版.金原出版,2020:pp.370-376.
2)後藤信哉.血栓形成の機序.日血栓止血会誌.2018;29:539-544.
3)矢冨裕.特発性血小板減少性紫斑病.検と技.2015;43:1070-1071.
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