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増大号 匠から学ぶ 血栓止血検査ガイド 2章 検査前プロセス
採血が血栓止血検査に及ぼす影響
著者: 小宮山豊1 松田将門2
所属機関: 1北陸大学医療保健学部 2福島県立医科大学保健科学部
ページ範囲:P.906 - P.913
文献購入ページに移動血栓止血検査には,血小板血栓にかかわる一次止血,フィブリン析出にかかわる二次止血,そしてフィブリン溶解にかかわる線溶それぞれに関する検査があり,血液が凝固する能力や血栓を溶解する能力を測定する.具体的な検査項目として,一次止血関連では血小板数や血小板凝集能など,二次止血関連ではプロトロンビン時間(prothrombin time:PT)や活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time:APTT),クロスミキシング試験,各種凝固因子活性,希釈ラッセル蛇毒時間(dilute Russell's viper venom time:dRVVT)など,線溶関連ではフィブリン/フィブリノゲン分解産物(fibrin/fibrinogen degradation products:FDP)やDダイマー(D-dimer:DD)などがある.このような血栓止血検査のうち,血小板数以外のほとんどの検査では,クエン酸Naを抗凝固剤に用いて採血することで,採血から検査実施までの間も患者体内と同等の凝固・線溶能を保持し,採血後に採血管内で凝固や線溶を進行させないことが,正しい検査の前提である.言い換えれば,不適切な採血管の選択や採血手技は原因不明の検査値変動の原因となり,臨床医の検査値判断に重大な影響を及ぼす可能性がある.これを防止するため,本稿では,適切な採血管の選択と採血手技について解説する.
血栓止血検査用検体の採血法やその後の取扱いに関する注意事項は,表1に示すように,①採血管,②採血手技,③操作(搬送),そして④保存と融解,に大別される1).採血手技は日本臨床検査標準協議会(Japanese Committee for Clinical Laboratory Standards:JCCLS)の「標準採血法ガイドラインGP4-A3」2)に則っているが,基本的には米国の臨床・検査標準協会(Clinical and Laboratory Standards Institute:CLSI)のガイドラインH21-A53)に準拠した採血法である.本稿では表1のうち,採血管と採血手技に関する注意点を解説する.
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