icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術51巻9号

2023年09月発行

文献概要

増大号 匠から学ぶ 血栓止血検査ガイド 3章 検査プロセス

PT

著者: 涌井昌俊1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部臨床検査医学教室

ページ範囲:P.951 - P.955

文献購入ページに移動
はじめに

 凝固・線溶検査は,未消費の凝固・線溶関連因子を総体または個別に評価するものと,凝固・線溶関連因子が体内で消費された痕跡を評価するものに大別される(図1).前者はプロトロンビン時間(prothrombin time:PT),活性化部分トロンボプラスチン時間(activated partial thromboplastin time:APTT),フィブリノゲン,第XIII因子(FXIII)活性,アンチトロンビン活性,その他の各種凝固・線溶因子活性,抗凝固・線溶因子活性が挙げられる.後者はトロンビン-アンチトロンビン複合体(thrombin-antithrombin complex:TAT),可溶性フィブリンモノマー複合体,プラスミン-α2プラスミンインヒビター複合体(plasmin-α2 antiplasmin inhibitor complex:PIC),フィブリン/フィブリノゲン分解産物(fibrin/fibrinogen degradation products:FDP),Dダイマーが挙げられる.

 凝固・線溶関連因子が体内で消費された痕跡の評価はマーカー分子の抗原量の測定に基づくのに対して,未消費の凝固・線溶関連因子を総体または個別に評価する検査は主に活性を対象とし,凝固時間法または合成基質法で実施される.凝固と線溶はそれぞれ活性化凝固因子,活性化線溶因子による酵素反応のカスケードで成立し,トランスグルタミナーゼである活性化FXIII(FXIIIa)を除けばいずれもセリンプロテアーゼ反応である.PT,APTT,フィブリノゲンその他の凝固因子(FXIIIを除く)の測定に用いられる凝固時間法およびFXIII活性,アンチトロンビン活性などの測定に用いられる合成基質法はいずれも試験管内で惹起される因子の酵素反応を利用する.前者はカスケードの最終生成物であるフィブリンの析出が検出されるまでの時間を,後者はカスケードの下流で生じる活性化凝固因子による合成基質からの生成物を,それぞれ測定する.

 PTとAPTTは代表的な凝固スクリーニング検査であり,生体内でまだ消費されていない凝固因子(FXIIIを除く)の活性を総体として評価する検査である.PTは外因系凝固能を総合的に評価する.因子活性欠乏または因子インヒビターによる外因系凝固異常の検索,ワルファリン療法のモニタリングに用いられる.

参考文献

●片桐尚子,涌井昌俊.血小板機能異常,凝固異常時に使用する検査−適切な選択とその解釈.Hospitalist 2019;7:537-550.
●金井正光(監),奥村伸生,他(編).臨床検査法提要 改訂35版.金原出版,2020.
●日本検査血液学会(編).スタンダード検査血液学 第4版.医歯薬出版,2021.
●高木康(監),山田俊幸,大西宏明(編).標準臨床検査医学 第5版.医学書院,2023.
●橋口照人.外因系凝固反応とプロトロンビン時間の多様性.日血栓止血会誌.2016;27:631-635.
●徳永尚樹.PT・APTT・フィブリノゲン.日血栓止血会誌.2018;29:558-563.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?