文献詳細
増大号 匠から学ぶ 血栓止血検査ガイド
3章 検査プロセス
抗カルジオリピン抗体/抗カルジオリピン-β2GPⅠ複合体抗体/抗β2GPⅠ抗体
著者: 野島順三1
所属機関: 1山口大学大学院医学系研究科保健学専攻生体情報検査学領域
ページ範囲:P.1013 - P.1016
文献概要
抗カルジオリピン抗体(anticardiolipin antibodies:aCL),抗カルジオリピン/β2グリコプロテインⅠ複合体抗体(anticardiolipin/β2-glycoprotein Ⅰ antibodies:aCL/β2GPⅠ),抗β2グリコプロテインⅠ抗体(antiβ2-glycoprotein Ⅰ antibodies:aβ2GPⅠ)は,いずれも免疫測定法により定量される代表的な抗リン脂質抗体であり1),抗リン脂質抗体症候群(antiphospholipid syndrome:APS)国際分類基準(“Sapporo Criteria” Sydney改訂版)に採択されている重要な検査項目である2).
aCLの基本的な測定原理(aCL測定系,図1a)は,固相化したカルジオリピンにリン脂質結合タンパク質であるβ2GPⅠを結合させた複合体を抗原とする.血清中では環状構造で存在するβ2GPⅠは,カルジオリピンなど酸性リン脂質(陰性荷電)に結合することにより伸長構造を呈する.aCLは,構造変化を起こしたβ2GPⅠ分子上のネオエピトープを認識して結合する抗体であり,正確にはβ2GPⅠ依存性aCLと呼ばれる3).APSの臨床病態に特異性の高い臨床的意義をもつ抗リン脂質抗体は,β2GPⅠ依存性aCLであることが確認されている.しかし,aCL測定系は原理上,β2GPⅠ依存性aCL以外にも固相化カルジオリピンに直接結合するβ2GPⅠ非依存性aCL(他の膠原病や感染症患者にしばしば出現する抗体)も混在して検出され,測定された抗体価がどちらに依存するaCLなのか,鑑別するのが難しい.
参考文献
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