文献詳細
増大号 匠から学ぶ 血栓止血検査ガイド
4章 検査後プロセス
—症例提示①—後天性血栓性血小板減少性紫斑病(後天性TTP)
著者: 上田恭典1
所属機関: 1倉敷中央病院血液内科・血液治療センター・外来化学療法センター
ページ範囲:P.1038 - P.1042
文献概要
血栓性血小板減少性紫斑病(thrombotic thrombocytopenic purpura:TTP)は,微小血管における血小板を中心とする血栓形成によって,血小板減少,機械的な溶血性貧血,阻血による臓器障害を呈する血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA)の代表的な疾患の1つである.病態と病因の詳細は他稿で述べられるが,フォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor:VWF)の切断酵素であるADAMTS13(a disintegrin-like and metalloproteinase with thrombospondin type 1 motifs 13)が先天的に欠乏,もしくは中和抗体や結合抗体によって活性が著減するために,血管内皮から分泌されたVWFの非常に大きな重合体が,切断されないまま血小板と結合し,微小血管でVWF血小板血栓を生じることによって惹起される病態であることが判明している.TTPは現在では,ADAMTS13活性が10%未満の場合を指し,基礎疾患のない場合も,他疾患に続発した場合もTTPであるとの診断となる1).
ADAMTS13についての知見が得られるまでは,TTPは“血小板減少,微小血管性溶血性貧血,腎機能障害,発熱,動揺する神経障害”の5徴を呈する疾患とされてきた.本稿では,後天性免疫性のTTPについて,病態の異なった3症例の初診時検査結果を提示し,診断に至るまでの特徴的で重要な項目や問題点について述べ,全体的な特徴について触れたい.
参考文献
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