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増大号 匠から学ぶ 血栓止血検査ガイド 4章 検査後プロセス
—症例提示⑤—FDP・Dダイマーの異常高値—胸水・腹水由来や非特異的反応など
著者: 徳竹孝好1
所属機関: 1長野赤十字病院輸血部
ページ範囲:P.1055 - P.1058
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フィブリン/フィブリノゲン分解産物(fibrin/fibrinogen degradation products:FDP)は,播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:DIC)や,ウロキナーゼあるいは組織プラスミノゲン活性化因子(tissue plasminogen activator:t-PA)による血栓溶解療法だけでなく,各種原因に基づく生体内の線溶亢進の結果として増加する.FDPのなかでもDダイマーは,凝固第XIII因子で重合したフィブリン(cross-linked fibrin degradation products:XDP)の分解により生じ,生体内の血栓形成の証拠となる1).
FDP・Dダイマーの検査は抗原抗体反応を原理としているため,他の検査項目同様に,免疫測定系にみられる非特異反応が起こりうる.さらに採血手技や検体処理過程,疾患や患者の状態によっても,病態と合わない検査結果が得られることもあることから,得られた値が真の値か非特異反応による影響なのかを鑑別する必要がある.
今回,病態と合わないFDP・Dダイマーの異常高値の要因を,症例提示して解説する.
フィブリン/フィブリノゲン分解産物(fibrin/fibrinogen degradation products:FDP)は,播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:DIC)や,ウロキナーゼあるいは組織プラスミノゲン活性化因子(tissue plasminogen activator:t-PA)による血栓溶解療法だけでなく,各種原因に基づく生体内の線溶亢進の結果として増加する.FDPのなかでもDダイマーは,凝固第XIII因子で重合したフィブリン(cross-linked fibrin degradation products:XDP)の分解により生じ,生体内の血栓形成の証拠となる1).
FDP・Dダイマーの検査は抗原抗体反応を原理としているため,他の検査項目同様に,免疫測定系にみられる非特異反応が起こりうる.さらに採血手技や検体処理過程,疾患や患者の状態によっても,病態と合わない検査結果が得られることもあることから,得られた値が真の値か非特異反応による影響なのかを鑑別する必要がある.
今回,病態と合わないFDP・Dダイマーの異常高値の要因を,症例提示して解説する.
参考文献
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