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増大号 匠から学ぶ 血栓止血検査ガイド 5章 疾患まとめ
先天性血液凝固異常/異常症
著者: 川杉和夫1
所属機関: 1帝京大学医学部附属病院血液内科
ページ範囲:P.1064 - P.1067
文献購入ページに移動先天性の血液凝固異常症(血栓性素因)とは,生理的な凝固制御因子であるアンチトロンビン(antithrombin:AT),プロテインC(protein C:PC),プロテインS(protein S:PS)の遺伝子に異常が生じ,凝固を抑制するこれらの因子活性などが低下して,血栓症〔特に静脈血栓塞栓症(venous thromboembolism:VTE)〕を発症しやすい状態に陥っていることを意味する.また,先天性血液凝固異常症の原因には上記の他にヘパリンコファクターⅡ(heparin cofactor Ⅱ:HCⅡ)欠乏症,プラスミノゲン異常症などの疾患も存在する.しかし,それら疾患は頻度的には非常にまれであり,また,病態として必ずしも確立されていない疾患も含まれており,先天性血液凝固異常症といえば,AT欠乏症,PC欠乏症,PS欠乏症を指すのが一般的である.一方,欧米では凝固第Ⅴ因子ライデン変異1)(factor Ⅴ Leiden,第Ⅴ因子のArg506がGlnに置換した異常分子となっている)が主要な先天性血液凝固異常症であり,白人の血栓症患者の10〜20%を占めている.しかし,日本人ではいまだにfactor Ⅴ Leidenが検出されておらず,わが国の患者であればほぼこの疾患を考慮しないでもよいと現時点では考えられている.
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