icon fsr

文献詳細

雑誌文献

検査と技術52巻11号

2024年11月発行

文献概要

書評

細胞診のベーシックサイエンスと臨床の実際 フリーアクセス

著者: 佐藤之俊12

所属機関: 1北里大学・呼吸器外科学 2公益社団法人日本臨床細胞学会

ページ範囲:P.1137 - P.1137

基礎医学的知識と臨床的意義をわかりやすく解説した逸書

 本書の上梓に先立つこと約30年前に出版された『細胞診のベーシックサイエンスと臨床病理』は,今日の細胞診における基礎的な部分の発展を予想するかのようなインパクトある内容であった.そして満を持して誕生したのが,そのリニューアル版である本書『細胞診のベーシックサイエンスと臨床の実際』である.実際,この約30年間では,医学において多くの分野で細胞生物学,分子生物学,分子遺伝学が目覚ましく,かつ,急速に進歩し,がんゲノム診療の実装化,新たな疾患概念の確立,分類の改訂,あるいは,各種がん取扱い規約の改訂,WHO分類の制定など,枚挙にいとまのない進歩が続いている.そして,これらの変化と並行して,細胞診に求められる内容も刻一刻と変わっているといえる.

 本書は,こうした医療の変化と細胞診に対するニーズを的確にとらえ,基礎医学的知識と臨床的意義をわかりやすく解説した逸書であるといえる.しかも,執筆陣は細胞診や病理関連の各分野のエキスパートというとても贅沢な顔ぶれである.内容は4つの章から構成されており,中でも圧巻なのは,第1章の「腫瘍の細胞生物学・分子生物学・分子遺伝学の基礎」と第2章の「押さえておきたいがんゲノム医療」だ.第1章では,腫瘍の理解に必要な遺伝子やゲノムについて,コンパクトでありながら,とてもわかりやすく解説され,さらに腫瘍化のメカニズムや腫瘍免疫といったがんゲノム医療に不可欠な基礎知識をわずか50ページ程で得ることができる.そして,その知識が第2章の理解に大いに役立ち,コンパニオン診断,免疫チェックポイント阻害薬,がんゲノムプロファイリング,エキスパートパネルなど,がんゲノム医療の理解と実践に必要な内容が網羅され,しかも細胞検体の取り扱いについての解説は,ゲノム診療を念頭に置いた方法の標準化,精度管理に深く関連する内容である.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら