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増大号 POCUSの決め手。 早く、正確な診断のために 4章 症状別検査の進め方
骨折・関節の痛みや腫れ
著者: 北村亮1 白石吉彦2
所属機関: 1隠岐広域連合立隠岐島前病院総合診療科 2隠岐広域連合立隠岐島前病院
ページ範囲:P.328 - P.333
文献購入ページに移動超音波診断装置の小型化によりベッドサイドへの普及が進み,超音波検査は救急現場や往診などで積極的に利用されるようになった.医療従事者がベッドサイドで観察範囲を絞り,臨床決断と侵襲的手技の質向上のために実施する超音波検査はpoint-of-care ultrasound(POCUS)と呼ばれ,その概念は国際的にも広く共有されるようになってきた.
運動器では骨折,関節液貯留,腱・靭帯損傷,皮下膿瘍や異物など軟部組織の病変などが適応となるが,その中でも骨折は比較的正確に診断可能であり,系統的レビューでは感度65〜100%,特異度79〜100%であった1).下肢については,病歴・身体所見をもとに開発されたオタワ足関節ルール,膝関節ルールがあり,見逃し回避を目指しているため,それぞれ感度は98%,99%と高いが,特異度は26〜48%,49%と低い2).一方で上肢については,各部位の身体所見の診断精度はばらつきが非常に大きい3).骨折部位別では鎖骨,眼窩,足,足関節,肋骨,大腿骨,上腕骨などは超音波検査のよい適応とされ,一方で橈骨,尺骨,脛骨,腓骨遠位端はその解剖学的形態から偽陽性となることも多く注意が必要である4).
肋骨骨折は気胸や肺挫傷などの合併症も多く,経過を通じて無気肺や肺炎を生じるリスクもあるため,その診断は非常に重要である.第一選択として胸部X線検査が施行されることが多いが,その診断精度はメタ解析では感度66%,特異度100%(救急医が読影)であった一方,POCUSの診断精度は感度97%,特異度89%であった5).
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