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文献詳細

雑誌文献

検査と技術52巻4号

2024年04月発行

トピックス

第2期薬剤耐性対策アクションプランが示す方向性

著者: 舘田一博1

所属機関: 1東邦大学医学部微生物・感染症学講座

ページ範囲:P.416 - P.418

文献概要

人類への危機として進行する耐性菌問題

 COVID-19によるパンデミックの陰で,ゆっくりと,しかし確実に進行しているもう1つのパンデミックがある.サイレント・パンデミックと称される薬剤耐性(antimicrobial resistance:AMR)の問題である.これまでにメチシリン耐性黄色ブドウ球菌,キノロン・セファロスポリン系薬耐性腸内細菌,多剤耐性の緑膿菌・アシネトバクター,バンコマイシン耐性腸球菌,薬剤耐性淋菌,多剤耐性結核菌,マクロライド耐性マイコプラズマなど,臨床上重要な病原体において次から次に耐性菌が出現している.

 抗菌薬の不適切な使用が耐性菌の出現を助長することは明らかである.一部の国や地域では,医師の処方箋なしに使用される抗菌薬〔OTC(over the counter)販売:一般用医薬品流通〕が耐性菌の出現と蔓延を加速している.しかし一方で,そのような廉価な抗菌薬により救われる命があることも事実である.抗菌薬は医療以外にも,家畜や水産,環境などの領域でも大量に使用されており,その対策にはワンヘルス(ヒト,動物,環境)の視点が重要となる.耐性菌の問題は医療だけで解決できるものではなく,社会,経済,貧困,環境の問題として考えていかなければならない1)

参考文献

1)舘田一博,石井良和.多剤耐性菌:どのようにして生まれ,拡がり,そして病原性を発揮するのか.日内会誌.2003;92:2097-2103.
2)O'Neill J, et al. Antimicrobial Resistance: Tackling a crisis for health and wealth of nations. The Review on Antimicrobial Resistance, 2014.
3)Antimicrobial Resistance Collaborators. Global burden of bacterial antimicrobial resistance in 2019: a systematic analysis. Lancet 2022; 399: 629-655.
4)厚生労働省.薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン(2023〜2027年).令和5年4月7日.
5)厚生労働省.薬剤耐性ワンヘルス動向調査年次報告書 2022年.令和5年1月24日.
6)World Health Organization. Vaccines for Antimicrobial Resistance (AMR).

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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