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FOCUS
病院排水浄化による環境薬剤耐性(AMR)負荷軽減策
著者: 黒田誠1
所属機関: 1国立感染症研究所病原体ゲノム解析研究センター
ページ範囲:P.706 - P.708
文献購入ページに移動ワンヘルスとして取り組む薬剤耐性菌の課題
さまざまな抗菌薬に耐性を示す(高度)薬剤耐性菌の出現と増加は,臨床のみならず家畜・野生動物の衛生環境にも大きな懸念材料となっている.抗菌薬は農作物を害する病原菌の予防・駆除にも利用され,ヒトを含む哺乳動物類の治療・予防にとどまらず,環境全体へ循環して薬剤耐性菌の拡散と影響も配慮すべき時代となっている1).人・動物・環境の健康は相互に関連しており,地球規模の健康をうたう“ワンヘルス(One Health)”の概念が生まれている.薬剤耐性菌により治療が困難にならないよう,それぞれの産業分野で抗菌薬の適正使用が図られ,持続可能な社会を目指している.その参考例として,以下が挙げられる.
・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)治療薬バンコマイシンと類似構造を有すアボパルシンの養鶏飼料添加物の指定取り消し(平成9年農林水産省令第11号)→MRSA治療の安心を確保.
・多剤耐性グラム陰性菌治療薬として処方されるコリスチンの家畜飼料添加物の指定取り消し(平成30年7月,平成29年消安第4994号)→グラム陰性菌治療の安心を確保.
・国内養鶏産業における抗菌薬セフチオフル(第3世代セファロスポリン)の自主的使用中止によりサルモネラ菌の耐性率が激減2)→サルモネラ食中毒における治療薬の確保.
・臨床における抗菌薬適正使用の推進とガイドライン3)→起因菌に効果的な抗菌薬を使用すること,無効の抗菌薬による選択圧で耐性菌を増やさない努力,耐性頻度を低下させ,既存の抗菌薬が有効に作用することを期待.
さまざまな抗菌薬に耐性を示す(高度)薬剤耐性菌の出現と増加は,臨床のみならず家畜・野生動物の衛生環境にも大きな懸念材料となっている.抗菌薬は農作物を害する病原菌の予防・駆除にも利用され,ヒトを含む哺乳動物類の治療・予防にとどまらず,環境全体へ循環して薬剤耐性菌の拡散と影響も配慮すべき時代となっている1).人・動物・環境の健康は相互に関連しており,地球規模の健康をうたう“ワンヘルス(One Health)”の概念が生まれている.薬剤耐性菌により治療が困難にならないよう,それぞれの産業分野で抗菌薬の適正使用が図られ,持続可能な社会を目指している.その参考例として,以下が挙げられる.
・メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin-resistant Staphylococcus aureus:MRSA)治療薬バンコマイシンと類似構造を有すアボパルシンの養鶏飼料添加物の指定取り消し(平成9年農林水産省令第11号)→MRSA治療の安心を確保.
・多剤耐性グラム陰性菌治療薬として処方されるコリスチンの家畜飼料添加物の指定取り消し(平成30年7月,平成29年消安第4994号)→グラム陰性菌治療の安心を確保.
・国内養鶏産業における抗菌薬セフチオフル(第3世代セファロスポリン)の自主的使用中止によりサルモネラ菌の耐性率が激減2)→サルモネラ食中毒における治療薬の確保.
・臨床における抗菌薬適正使用の推進とガイドライン3)→起因菌に効果的な抗菌薬を使用すること,無効の抗菌薬による選択圧で耐性菌を増やさない努力,耐性頻度を低下させ,既存の抗菌薬が有効に作用することを期待.
参考文献
1)厚生労働科学研究費補助金新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業「環境中における薬剤耐性菌および抗微生物剤の調査法等の確立のための研究」(H30-新興行政-一般-002)の研究班(研究代表者:金森肇).環境中の薬剤耐性に対するイニシアチブ 現状と課題.https://amr.ncgm.go.jp/pdf/20200128AMRenvironmentJP.pdf(2024年4月8日アクセス)(原著:Initiatives for Addressing Antimicrobial Resistance in the Environment: Current Sitation and Challenges. 2018. https://wellcome.ac.uk/sites/default/files/antimicrobial-resistance-environment-report.pdf)
2)Shigemura H, et al. Decrease in the prevalence of extended-spectrum cephalosporin-resistant Salmonella following cessation of ceftiofur use by the Japanese poultry industry. Int J Food Microbiol. 2018; 274: 45-51.
3)国立国際医療研究センター病院AMR臨床リファレンスセンター.AMRの院内感染対策 抗菌薬の適正使用について.2017年9月.https://amr.ncgm.go.jp/medics/2-5-1.html(2024年4月8日アクセス)
4)Baba H, et al. Review of Antimicrobial Resistance in Wastewater in Japan: Current Challenges and Future Perspectives. Antibiotics (Basel) 2022; 11: 849.
5)Sekizuka T, et al. Metagenomic Analysis of Urban Wastewater Treatment Plant Effluents in Tokyo. Infect Drug Resist. 2022; 15: 4763-4777.
6)INTEGRALL database.http://integrall.bio.ua.pt/(2024年4月8日アクセス)
-Positive Klebsiella pneumoniae Strain Isolated from the Effluent of an Urban Sewage Treatment Plant in Japan. mSphere 2018; 3: e00314-e00318.
8)Sekizuka T, et al. Characterization of NDM-5- and CTX-M-55-coproducing Escherichia coli GSH8M-2 isolated from the effluent of a wastewater treatment plant in Tokyo Bay. Infect Drug Resist. 2019; 12: 2243-2249.
9)Azuma T, et al. Inactivation of Bacteria and Residual Antimicrobials in Hospital Wastewater by Ozone Treatment. Antibiotics (Basel) 2022; 11: 862.
10)Azuma T, et al. Performance of a Pilot-Scale Continuous Flow Ozone-Based Hospital Wastewater Treatment System. Antibiotics (Basel) 2023; 12: 932.
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