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文献詳細

雑誌文献

検査と技術6巻1号

1978年01月発行

文献概要

技術講座 病理

中枢神経系の染色—I.標本作製

著者: 鬼頭つやこ1

所属機関: 1東京都精神医学総合研究所神経病理部門

ページ範囲:P.28 - P.31

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 神経系,殊に中枢神経系の病理組織検査には他の身体臓器の組織検査と異なるいくつかの特徴がある.その一つは神経系では細胞の分化が著明で個々の細胞成分の組織化学的特異性が著しいことである.実質細胞である神経細胞胞体のほかに髄鞘と軸索,マクログリヤ,ミクログリヤ,オリゴデンドログリヤの細胞及び線維などがあり(図1),それぞれの成分に応じて,それに適したいくつかの特殊な染色法がある.それらの染色結果を総合してはじめて神経系の病理所見を把握することができる.第二の特徴は中枢神経系の構造の複雑さである.他の身体臓器,例えば肝臓などはどこをとっても同じ構造であるのとは著しく異なる.このため中枢神経系の病理では病変の局在あるいは広がりが極めて重要であり,同じ病変でもその局在または広がりが異なればその病変の臨床病理学的な意味は全く違ってくる.これらの神経系における特徴を考慮して標本作製に携わることが必要である.特に脳の構造の特徴から標本の切り出しは多種多様となり,時には脳の半球や両半球の一つの断面を標本にすることさえある.脳に肉眼的な変化がないときでも,前頭葉,側頭葉,頭頂葉,後頭葉,基底核,脳幹,小脳を含む切片を作ることが最低限要求される(図2).また最近,CATまたはCT(Computerized axial tomography)などの関係で診断面ではこれらのスキャンと同じ角度で脳を切り出して検索する場合もある.
 冷回は自らの経験を基に中枢神経系における諸種染色法,固定法などについて,二,三の注意すべき事柄や要領などを紹介したい.なお包埋剤としてはセロイジンとパラフィンが用いられているが,私どもは最近はもっぱらパラフィンのみを使用している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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