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文献詳細

雑誌文献

検査と技術6巻3号

1978年03月発行

文献概要

測定法の基礎理論 なぜこうなるの?

キレート呈色反応

著者: 伊藤純一1 上野景平1

所属機関: 1九州大学工学部合成化学

ページ範囲:P.193 - P.198

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 化学結合と光吸収
 比色法を理解するためにはまず光吸収を理解しなければならない.化合物の結晶や溶液の色は白色光(太陽光や白熱電球の光)のある特定の波長の光をその化合物が吸収した残りの光の色,すなわち余色である。したがって溶液が"青色を呈した"と言うよりも"黄色光が吸収された"と言うほうがその溶質の本質をよく表している。化合物の構造とか結合様式と光吸収は密接な関係にある.なぜなら可視光線や紫外線は主として原子間の結合に関与する電子によって吸収されるからである.
 古典物理学では光は電磁波の一種であり,一方原子や分子の中の電子は原子核の引力によってある固有のエネルギー状態(軌道)に束縛されているが,この電子の状態を振動系であると考える.こうすると光の吸収は次のように理解される.すなわち波動である光が原子や分子にぶつかったとき,その中のいずれかの電子の固有振動数が,ちょうど光の振動数と一致したときだけ電子は共振して光のエネルギーは減少する.この現象はうなりをあげている音叉を種々の力で張られたピアノ線に近づけたときに,音叉と同じ高さの音(振動数)を持つピアノ線だけが共鳴する現象に似ている.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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