文献詳細
文献概要
測定法の基礎理論 なぜこうなるの?
体位変換による生理—自律機能変化
著者: 高木健太郎1
所属機関: 1名古屋市立大学
ページ範囲:P.528 - P.534
文献購入ページに移動上のように定義すると,体位の変換と言うのは臥位から座位に,また仰臥位から伏臥位に,臥位から立位に,更にまた直立位から倒位に変わることを意味する.ここで注意しなければならないことは同じく体位変換と言っても能動的な自発的な変換と受動的な変換とがあるということである.能動的な場合には体位変換に必要な筋収縮に伴って,これに適合するような循環系,呼吸器系などの適応変化が起こるのが通常であるが,受動的な場合には普通骨格筋の収縮がないか,あっても僅少であり,自律神経系機能の変化も適合しないことがある.一例をあげてみよう.頭を自分で回転するときに眼球は回転方向に一緒に回転し,回転した位置かそれ以上の位置で眼球運動はピタリッと停止する.しかし頭が受動的に回転させられると,眼球は原位置に止まろうとし,外から眼球を見ると,眼は頭の回転と反対方向に動くように見える(眼振の緩徐相).更に頭の回転が続くと眼球は急に速やかに回転方向に動く(眼振の急速相).この眼振の緩徐相は一種の制御性の反射運動と考えられ,自発回転運動のとき,眼球の回転方向への行き過ぎを是正制動する働きを有しているらしい.すなわち自発運動のときには見えない運動が受動運動のときには顕現する.また受動的に頭を回転すると嘔気,めまいなどの不快症状が起こることがあるが,自発回転では少ない.以上はいずれも主として前庭器官の刺激による.体位を変換する場合にもこのことを念頭におく必要がある.
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