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文献詳細

雑誌文献

検査と技術7巻3号

1979年03月発行

文献概要

病気のはなし

蛋白漏出性胃腸症

著者: 大野文俊1

所属機関: 1徳島大学第1内科

ページ範囲:P.188 - P.193

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 概念の成り立ち
 蛋白漏出性胃腸症とは単一の疾患ではなく,むしろ症候群と考えたほうが理解しやすい.その基礎になっている共通の現象としては,胃腸管粘膜を通して消化管腔内へ血漿蛋白質のうち,主としてアルブミンが直接漏出して大量に失われるということであり,症状的には低アルブミン血症のため浮腫を来すものである.外見的に類似の病態は,もちろんネフローゼ症候群でもみられるが,本症候では蛋白漏出の部位が腎の糸球体毛細管であるということ,ならびに尿中に排出されたアルブミンは体外に排出され再吸収がないという点で前者とは本質的に異なっている.
 蛋白漏出性胃腸症にみられるこのような胃腸管への蛋白質の漏出という新しい病態を,近代医学的手法で明らかにし,その疾患概念を確立したのはCitrinであるが,これを歴史的にみてみると次のような経過で成立したものである.従来より浮腫を唯一の症状とする本態性低蛋白血症という病気が知られていたが,これは別名を蛋白尿を伴わないネフローゼとも言われて,その血漿蛋白質が体内のどこへ失われるかという点が謎とされていた.一方,二,三の消化器病,例えば熱帯性下痢(スプルー)などで低蛋白血症性浮腫がみられることが古くから知られていたが,その後,特にMenetrier病(胃巨大皺襞症)では,しばしば高度の低蛋白血症と浮腫が合併することが注目されてきた.Balfour(1950)は,本症の浮腫は胃切除手術によってのみ改善することを知り,本症の低蛋白血症の原因として胃の関与の重要性について示唆した.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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