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文献詳細

雑誌文献

検査と技術7巻8号

1979年08月発行

文献概要

コーヒーブレイク

ある美容室で

著者:

所属機関:

ページ範囲:P.666 - P.666

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 転居して間もない日曜の朝,近所の美容室を訪ねたところ始業時間の早い店が見当たらず,かなり捜し歩いた末,店の開いている美容室が目に止まった.中にはだれもいなかったが言葉をかけると,長い髪を金髪に染め,見るからに度の過ぎた化粧をした女性が現れ,8時半より始めるのでそれまで待って欲しいと言う.化粧が不自然なのが気掛かりであったが,ほかに早く出来そうな店はないので待つことにした.しばらくすると常連らしい老女が3人入ってきて彼女に"先生は?"と聞いた."今日は日曜日なのでお休みです"と彼女."では今日はあんた一人""ハイ"一人でこんなにたくさんの人さばけるのかな,ほかの店にすべきだったと内心思った.そのうえ,私が美容師と思っていた金髪の彼女は実習生であることが他の客との会話から分かった.洗髪の仕方,カットの仕方などぎごちなさが感じられ,経験がまだ浅いことが伺われた.他の客が待っているのに彼女はあわてる様子もなく,私の髪にカーラーを一つ一つ丁寧に付けてゆく.時々気に入らないのか巻いたものをやり直している.丁寧にやってもらうというのは感じの良いものである.
 途中で時間待ちの時,頭皮の一部がいやにヒリヒリする.洗髪後すぐにパーマ液に触れたせいだろうと思って我慢し,後の乾燥も一番低い温度でお願いした.家に帰って早速外出しようとしたが,どうも頭皮のヒリヒリするのが気になるので鏡で見ると,頭皮の数か所が赤く皮がすりむけて浸出液が出ていた.セットの際には髪を少しずつ分けて行うのでこの傷に気付かないはずはない,客が気にすると思って彼女は黙っていたのであろう.幸い傷は1週間後には跡形もなく回復したが,素直に詫びることをしなかった彼女の態度は不快である.私がこの美容室で感じたものは,ある病院を初めて訪れる患者さんの不安感よりは小さいものであろう.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1375

印刷版ISSN:0301-2611

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