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総説:先天梅毒の臨床検査診断
著者: 猪狩淳1
所属機関: 1順天堂大学臨床病理
ページ範囲:P.53 - P.55
文献購入ページに移動 梅毒感染の年間発症頻度は1973年以来ゆっくりではあるが,着実に増加してきている.これら梅毒感染例の大多数は妊婦であり,このために臨床医は新生児梅毒の診断上,増大する問題に直面しているのである.新生児の梅毒は,中枢神経系に活動性感染巣があっても,臨床的には不顕性であり,症状の発現は遅れ,また症候がほかの病気と紛らわしいということがある.そこで先天梅毒の診断には母親の病歴,下疳の検索,母と児の梅毒血清反応検査などのいろいろな診断基準が利用されている.更に母親に関するデータを注意深く検討し,判断すべきであろう.妊娠中ではVDRLの生物学的偽陽性反応(BFP)が高頻度に認められることは周知の事実である.BFPの原因となる抗体は受動的に胎盤を通過し,子供にもVDRL偽陽性反応をもたらす原因となる.FTA-ABSテストの偽陽性反応も,これはしばしば見逃されているけれども,妊娠中にみられることがある.時に妊娠によると思われるFTA-ABSの生物学的偽陽性反応がみられる.なお,FTA-ABSの偽陽性反応は,異常グロブリン,自己免疫性疾患,急性感染症,γ-グロブリンによる治療時や鎮静剤(睡眠剤)常用などに伴う疾患でみられたという報告がある.更に,偽陽性はトレポネーマ抗原に対する抗体の不完全な吸収によりみられることもある.
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