検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
門脈圧測定の基礎理論
著者:
深沢正樹1
杉浦光雄2
所属機関:
1東京大学医学部第2外科
2順天堂大学外科
ページ範囲:P.985 - P.994
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門脈は肝臓の機能血管であり,胃以下の消化管,膵,脾などから起こり,合流して門脈本幹となる.その後肝内に入り,分枝して類洞と呼ばれる毛細静脈床を形成して終わる特異な血管である.またこの血管には通常の静脈のような逆流防止の弁がついておらず,正常人では1分間に肝血流量の3分の2に当たる約1,000mlという膨大な血液を専らその圧勾配によって流しつづけている.したがってこの流体系のどの部分に抵抗が発生しても,圧異常や血液の逆流などの血流異常が起きる.この病態がいわゆる門脈圧亢進症である.この門脈血行動態異常を的確に把握するための検査法としては門脈造影や門脈圧測定が最も重要である.しかし,前に述べたように門脈は解剖学的にも特異な位置にあり,通常の動静脈のごとく体表の血管との直接的な連絡がないため,体表の血管からカテーテルを挿入し,目的とする血管に到達することが可能な一般の動静脈造影とは異なる手技が必要とされる.
この門脈造影の方法は一般の動静脈造影法と同様に血管にカテーテルを挿入し,血管用の造影剤を速やかに注入して撮影するものであり,門脈圧測定も挿入したカテーテルを圧棒に連結し,水柱の高さを読むことにより水柱圧として表現するもので,検査法としては比較的簡便な手技でこと足りる.したがって門脈造影法や門脈圧測定法は専ら門脈に到達するルートの開発に主眼がおかれて種々の手技が考案されており,現在比較的よく行われている方法も,そのほとんどが門脈到達方法によって分類されている1).