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東西南北
機器診療の落とし穴
著者: 松倉豊治1
所属機関: 1大阪大学
ページ範囲:P.1032 - P.1032
文献購入ページに移動私は永い間法医学の勉強と実務に明け暮れて来たが,今から20年ぐらい前,西ドイツのフライブルグ大学の法医学教室を訪ねたとき,L助教授(当時)がそのころ先端的であった血中酒精濃度の多数同時短時間測定装置を駆使して,西ドイツのほとんど全域から急送される交通事犯関係の血中酒精濃度査定に従事,1日の処理数のおびただしい集計を誇らしげに私に説明するのに敬意を表した記憶があるが,後刻落ちついて考えるに,そこに得られた数値がたちまち警察や裁判所に送られて被疑者の刑事責任の有無・程度の判断につながるとなると,その機器及びオペレーターの完全さにその人の運命(というと大げさだが)がかかることに思い至って,しばらくは,当時の尖端的新鋭器の功績とそれに頼り切ることに潜む"悲劇の幻影"を脳裡に思い浮かべたことである.
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