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検査法の基礎理論 なぜこうなるの?
メタクロマジー
著者: 松本武四郎1
所属機関: 1東京慈恵会医科大学病理学
ページ範囲:P.542 - P.547
文献購入ページに移動どんな科学領域でも純理論的な部分と経験的な部分を含むことは当然だが,医学領域では理論に先行する経験の積み重ねの歴史が長いだけに,理屈は分からなくとも,ともかく独特な現象だということである名称が与えられ,その名を通じて人人の間に広く知られるようになるといった種類の概念が少なくない."炎症"などはその適例であろう.メタクロマジーもその意味ではこれと同類と言える.もっとも,理論は別として,メタクロマジーの場合,感覚的事実としては炎症のように複雑ではないから,形式的定義は比較的簡単である.すなわちいろいろな組織をある色素で染めたとき,組織あるいは細胞内にその色素本来の色とは異なる色調に染まる部分が見えることがある.この色調変化の現象がメタクロマジー(異調染色)である.
もともとメタクロマジーという語がそういう現象そのものの表現なので,メタ(ギリシア語μετά)は接頭語として"変化"の意,クロマ(χρ-ώμα)は皮膚→皮膚の色→色と転じた意味,語尾のジー(σ)ια)は性質または状態を表している.またこれと直接に関連する語としてオルトクロマジー(正染性)がある.オルト(ギリシア語ὀρθός)は直,正の意で,上記同様のクロマジーと結合すれば,メタクロマジーに対して,その色素本来の色に染まる状態を言うことになる.
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