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コーヒーブレイク
重力と人間
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ページ範囲:P.22 - P.22
文献購入ページに移動ところで,スタートは自立精神の欠けた,いささかだらしない人間の赤ちゃんも1年たつと,重力に対してアッと驚くような挑戦を始める.つまり2本足で垂直に立ち上がるのである.他の多くの動物が四つんばいで,心臓と脳・腹部内臓がほぼ同一レベルなのに,人間では重力の影響を強く受ける直立位で頭にはとかく血液が十分に届かず脳貧血を起こすし,下半身には血液がよどみがちで足がむくんだり,静脈瘤ができたり,痔が悪くなったりする.このような不利はあっても,目の位置は高く見通しがよく,手は自由に仕事に使えて人間らしい生活をおくることになる.ところで,しばらく重力から解放されてみたらどうなるだろうか.宇宙飛行で最も役に立たなくなるのが両足で,不要な大きな2本のしっぽになってしまう.前足(つまり手)にはまだこまごました仕事はあるが,後足のほうは停年で急に1日中家にいるようになった御亭主みたいなもので図体は大きくて,やることがない.こうなると骨からはカルシウムは抜けて行くし,循環器の働き方も変わってくる.地球にかえってきても,立ちくらみしてすぐには立って歩けなくなってしまう.さて地球上にいる限り,重力とたたかい続ける人間もやがては,さからわず横になって人生を終えることになる.
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