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技術講座 血液
白血球の特殊染色(Ⅲ)—エステラーゼ
著者: 古沢新平1 佐藤玉枝2
所属機関: 1独協医科大学第三内科 2独協医科大学病院中央血液検査科
ページ範囲:P.483 - P.488
文献購入ページに移動エステラーゼ(ES)は,広義にはカルボン酸エステルの加水分解酵素であるが,血球の染色の対象となるのは比較的短鎖の脂肪酸エステルや芳香族エステルに作用するものを示す.本酵素の細胞化学的証明法は,ホスファターゼの場合と同様にアゾ色素法を応用したものである.すなわち,
ナフトールの脂肪酸エステル +H2O/エステラーゼ→ナフトール↓+ジアゾニウム塩 不溶性アゾ色素
ES染色に用いられる基質,すなわちナフトールの脂肪酸エステルにはおよそ6種類あり,用いる基質によって血球の染色性はかなり異なる1).これらのうち今日よく用いられるのは,①αナフチルアセテート,②αナフチルブチレート,及び,③ナフトールAS-Dクロロアセテートの3種類である.①と②は,いずれも単球系を強く染めるが好中球系は陰性という共通点があり,非特異的ESと呼ばれる(表1).また基質の名をつけて①はアセテートES,②はブチレートESと呼ぶこともあるが,両者の間には他の血球の染色性に若干相違があり,単球系の特異的染色性という点では②のほうが優れている.しかしリンパ球系細胞の染色性は①のほうが強く,特にリンパ球系細胞の染色性を観察する目的で①を用いて酸性域で染色する酸性ナフチルアセテート(acid naphthylacetate esterase,ANAE)染色法が近年さかんに検討されている.
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