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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生1巻5号

1947年03月発行

雑誌目次

特輯

世界衞生憲章

著者:

ページ範囲:P.344 - P.347

―總司令部民間情報教育部より特別提供―
 (これは,1946年7月22日,New-Yorkで開催された,世界衞生連合會議の閉會時に述べられた挨拶である。Thomas Parran氏は米國公衆衞生局長,世界衞生連合會長)
 本會議は歴史的な國際衞生會議でありました。他の國際的會議と同様に大成功でありました。これは全く公衆衞生と醫學における世界の指導者である代表者各位の顯著な能力,專門的雰圍氣及び協調精神に負ふものであります。

アメリカ合衆國に於ける結核の豫防事業,施設の現況竝に最近の結核治療方法に就て—1月21日 醫師會館に於ける講演要旨

著者:

ページ範囲:P.347 - P.354

 現在アメリカに於ける結核豫防事業は極めて進歩してゐる。之は偏へにアメリカの一般民衆が結核に充分に注意を向けるやうになつたお蔭である。此のやうになつたのは結核豫防會の活動,個々の醫師,各種の醫事團體,普通團體,非專門家に依つて組織されたるもの,新聞,公共診療所,看護婦,公私結核病院の努力の賜である。
 アメリカ人は一般に,結核になると入院して治療を受ける。之はアメリカ人は病院治療が(1)患者にとつて有效であること(2)患者發生家族への保護となること(3)彼等の住む社會に對する市民としての責任であること,を自覺してゐるためである。現在のアメリカに於ける結核豫防は本世紀の初期に芽生へて發達をつゞけて來たものである。結核豫防事業は抑々普通團體に興味をもたれて芽生えたのである。此の事業の或る面は醫師及各種の組織化された醫學協會によつて反對を受けた。現在日本に於てうけてゐるやうな醫師の反對とか迷信もあつた。それにも拘らす結核豫防事業は進歩し今日多くの人々の生命を救つてゐる。このやうな状態は日本でも多々見受けられる。日本國民はアメリカの結核豫防事業が歩んで來なければななかつた荊の道から學ぶことがあるであらう。併しながち日本國民は之もらの道をあまりにも速く歩んだために多くの重要なことも見落してゐると云へる。御承知のやうに總司令部公衆衛生福祉部では日本の結核豫防計畫を樹立した。それは5項目よりなつてゐる。

傳染性疾患の防遏

ページ範囲:P.355 - P.364

(米國公衆衞生協會發行 1945年 第6版)
 本書は急性傳染病を始め結核,性病,マラリヤ,その他あらゆる傳染性疾患を,その防疫處置,豫防方法の立場から述べられてあり,實に要を得てしかも簡明,不要を省きしかも懇切,實地醫家並に衛生技術官の絶好の參考書であり必携の書である。
 本書に取り扱つてある傳染性疾患は71種類あり,その各々に就き疾患の認知法,病原體,感染源,傳染方法,潜伏期,感染期間,感受性と免疫,流行,防疫法の各項に就き要領よく記載されてある。

保健所内に醫療施設を併設する案

ページ範囲:P.365 - P.372

The Health Center Adaptation of Physical Plants to Service Concepts Joseph W. Mountin and August Hoenack. Public Health Reports, Vol. September. 20, 1946, No, 38, P. 1936
 元來Health Centerとは,衞生局又はそれと類似の特殊機關を入れる建設物であつた。初期の衞生局は保健事業の行政と特殊機關とよりのみなつて居つたから,保健所にも殆んど圖書室,陳列室,或は檢診室と言ふ樣なものはなかつた。稍々時代を經て公衆衛生業務も擴張せられて,それが保健所施設にも影響して來た。即ち個人や集團の檢診,治療業務等が追加せられる様になつて,各保健所でも一般病院外來に見る樣な樣式の施設を必要とするに至つたのである。

ヂフテリア豫防接種化膿問題に關する實驗的檢索—明礬トキソイド使用

著者: 卜部義雄

ページ範囲:P.373 - P.376

 昭和21年11月當地方に汎く行はれたヂフテリア豫防接種に於て,接種後皮下に化膿を起した者が多數出たので,一般民衆に豫防接種に封する恐怖感を起さしめ,稍々もすれば今後行はる可き豫防接種を忌避するが如き傾向さへ見えたので,化膿の眞の原因を探求して今後再び斯くの如き不祥事の起らない様にするため調査を行ふ事とした。然し元より地方小開業醫であり,且つ連日多忙餘暇を以てした調査であるから不備の點有るは免れない。
1)化膿率 郡内3町29ケ村につき化膿率を知るため各町村長に對し接種施行人員(第1囘接種)の報告を依頼し,他方郡内開業の醫師に取扱患者の報告を煩したのであるが,町村長からの報告は極めて良好で2ケ村の未報告があつたのみで他の30ケ町村からは全部報告を受けたが,醫師からの報告は少く郡内診療所72の内36の報告を得たのみで36診療所からは報告を戴けなかつた。

衣服の衞生學的要項

著者: 入鹿山勝郎

ページ範囲:P.377 - P.379

 衣服の衞生學的要項として最も必要なことはその保温性の問題である。從つて衣服の保温性に就ては從來多くの研究がなされて來たが,未だ嚴密科學的意味に於ける保温性を量的に明確に表示し得るものがないと言ふても過言でない。榮養學に於ける食物のカロリー價の如く,衣服の保温性を簡明に表はし得たら寒暑に對する衣服の調節もより合理的に行はれるであらう。而らば何故衣服の保温性の問題が容易に解決されなかつたか。この問題に答へるために保温性に關する從來の研究方法を窺ふことにする。

綜説

衞生教育の實際

著者: 野津謙

ページ範囲:P.329 - P.335

緒言
 人口4700を有する向ケ丘地區は川崎市の一部とはいふものの,戸數800の中469戸が農業を職業とし,他に疎開者,復員者,引揚者を始め,商人,工員,等殆んど全部が多少の農業を營んでゐる所の無醫地區であつた。去る昭和21年の3月,始めて國民健康保險組合の診療所が創設せられ,私は,此處を根據地として,該地區の保健問題を衞生教育的に推進して今日に到つた。その農家を對象とした衞生教育の實際を基いにして以下私見を述べる。

原著

東京都下學徒結核症の戰時戰後の比較—第一報

著者: 渡邊博 ,   淺羽陽

ページ範囲:P.336 - P.339

緒言
 昭和21年3月より10月に至る8ケ月間に第一健康相談所集團檢診係に於て行つた集團檢診の結果のうち,男子及女子中等學校の成績を,戰爭初期のそれと比較して報告する。
 研究の對象としては,男子中等學校13校6301名,女子中等學校19校7741名をとつた。これらの集團は何れも當所員がツ反應を行ひ,陽性者にはすべてレ線間接撮影を行ひ,そのうち所見を認めた者は更に透視を行つて無所見者と完全治癒確實な者とを除いて他の者に直接撮影を行つた。以上の檢診過程の全部を當所で行つた學校のみを對象とした。但しK中學校はB.C.G.豫防接種を頻囘に行つてゐた爲め,自然感染に依る陽轉とB.C.G.に依る陽轉との鑑別が困難になつたので今囘の報告からは除外した。同校に就てはその患者發生状態などを調査すれは又た興味ある成績が得られるものと思つてゐる。更に研究を進めて報告するつもりでゐる。

論説

食の問題

著者: 齋藤潔

ページ範囲:P.340 - P.340

 民生の安全は先づ食糧の確保から始まり,世界平和の保障もまた食の問題の解決にあることはいふまでもない。新日本建設の第一段階として,食糧政策が緊急且つ重要問題であることは,吾等の日常痛感してゐる所である。狭い國土に8000萬の民族が住んで,海外との貿易が限られ,移出民も不可能となる運命である。未墾地の開拓が行はれるとしても,大體主食2000萬石は年々海外らの輸入を俟たねばならない。今後海外からの輸入は,みかへり物質とのにらみ合はせできるまでであろうが,どの道輸入總額に對して食糧費の占める部分は大きいものであろうから,この輸入物質としての主食の額を出來るだけ少くすることが必要である。そのためには國内の食糧増産が考へられる。未墾地の開拓と農業技術の向上に依る農産物の増産,水産物の増産,蓄産の奬勵等が計畫され,一部は既に始つてゐるが,ここに一つ見のがされてゐるものがある。食糧は單に増産されただけでは,未だ食の問題の解決に十分益する所が少い。増産された食糧の地域的配分が合理的に行はれねばならない。
 從來自由經濟に於ても農産物は農村にあり餘り,農村は農産物のみに依つて榮養を維持しようとしてゐた。米のみから蛋白質を攝るとすれば,農民は1人1日1キログラム以上の米を消費することとなる。今後はかかる農村の非科學的米の浪費は許さるべきでない。宜しく水産物の加工事業を増進して,都市と農村との蛋白質の榮養學的配分を適正ならしむべきである。

學者とその培地

著者: 川畑愛義

ページ範囲:P.341 - P.342

 水道水の鹽素消毒に關しては,吾々と米國陸海軍との間に相當にはげしい論戰をたゝかはしたし,現在尚お論爭中であるが,第八軍はそのカンカツ下の諸都市に對して,米國陸軍の標準に從ふべき旨の指令をEichelberger中將の名を以て發して來た。
 此の指令は水質衞生の權威第八軍付醫官J. Jack Hinnman大佐の意見が強く反映されてゐると考へられる。Col. J. HinnmanはThe Standard method of Water Analysisの委員會のChairmanで,又た水道協會の會長であるともきいてゐる。彼が水道,特くに水質衛生の權威であることはあらそえないところであらう。

米國に於ける公衆衞生と公衆責任(Public Liability)

著者: 早川淸

ページ範囲:P.342 - P.343

 新憲法に「國民は健康で文化的な最低限度の生活を營む權利を有し,國はすべての生活部面に就いて社會福祉,社會保障,公衆衞生の向上及び増進に努めなければならない」とある。權利の存する所義務がある。即ち逆に國民は社會福祉,社會保障,公衆衞生の向上及び増進に關し公衆に對する義務がないであらうか。之れ即ち公衆責任(Public Liability)である。米國に於てはこの觀念は一般に特くに強く,日本であるとせいぜい公衆道徳位にしか看做されて居らぬ樣なことでも違反者を處罰する位いの強い法律が規定せられておる場合が多い。
 例へば私があちらに居つた時,Los Angelsの或る果物屋の店先きのコンクリートの前で,お婆さんがそこに捨てられてあつたバナナの皮で滑つて轉び怪我をしたところ,不用意に果皮を店先に捨てた角でそこの主人は罰せられた。又た他の例では,冬,屋先の道路にぶちまかれた水が夜に凍結し,翌朝そこを通つた男が滑つて怪我をしたので,その家の主人はすぐ公衆責任に問はれ訴へられて高價な賠償を佛はされた。又たNew Yorkの或る商社の便所の手洗場に石鹸がなかつたので私が訊ねたところ,そこでは石鹸の水が大理石の床に落ちて客が之れに滑つて轉び,公衆責任に問はれたことがあるので以後置かないと言ふ説明であつた。

論述

公衆衞生行政の今日の問題

著者: 小林彰

ページ範囲:P.380 - P.384

 公衆衞生乃至公衆保健なる名稱の下に,それは人間生活の種々相中の如何なる部分を取扱ふのであるべきかといふことに就いては今日愚見を申述べない。行政の面からいふ公衆衞生とか公衆保健とかいふ名稱下に取扱はれてゐる範囲は各國でも可成り異なり,しかも考へ樣によつてはこれ程範囲の廣く解釋できるものは類ひ少ないと思はれる。
 今日はしかし,こうした問題に就いては觸れないでおく。唯だ筆者が任を執つてゐる東京都の公衆衛生に關する行政單位に於て關係する2,3の問題について愚見を述べて,大方の示教を仰ぎたいと思ふ。そうして恐らくはこれらの問題は,公衆衞生なる名稱を冠する行政單位に於ては,全國に共通した問題であろうと信ずるから。

結核對策の反省

著者: 芦田定藏

ページ範囲:P.385 - P.390

 結核豫防が,わが國の保健對策において最も重要な地位を占めてゐることは今更多言を要しない。歴代の衞生當局は結核豫防について,常に強い關心を有し,種々施策し來つた。にもかゝはらず,依然として高率な結核死亡率を示してゐるのは何故であらうか。
 結核對策に何等かの缺陷があつたのではなからうか。以下二三の點についてその反省を試みたい。

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公衆衞生今昔(5)

著者: 高野六郎

ページ範囲:P.391 - P.392

 結核豫防法といふ單行法が出るまでは可なり暇がかゝつたものであるが,法律が出來たからとて中々豫防の實績は上るものではない。大正3年に六大都市へ結核療養所を建てるといふ法律が出たが,大阪の療養所がやつと大正6年に開所し,東京の療養所は大正9年の開所といふ風に遲くれて居る。それに療養所を大都市に申譯ばかりに作つて見た所で,全國の結核豫防上に幾許の效果も期待し得ないのは當然であるから,兎も角法制の體裁だけでも整へやうといふ考から,大正8年に結核豫防法が發布され,療養所設置の義務も人口5萬以上の都市,その他特くに必要な公共團體といふ事に擴大された。一方に於てはサナトリユーム増設で開放患者を收容隔離すると共に,他方では患家に消毒を勵行させ,行政官廳としては,必要な範囲に健康診断を行ひ,危險患者の接客從業を禁止し,適當な消毒を督勵し,公衆の出入する場所に痰壺を置かせるなどの規定があつた。その實績を省みるに,療養所の設置は國の豫算も取れないし,地方の豫算も取れないし,或は豫算がとれると敷地が見つからないといふ有樣で中々埒があかなかつた。思ふにせめて療養所設置だけでも十分に行はれ,而して療養所が自ら結核豫防相談所であり,家庭療養者の指導所であり,更に進んで結核豫防生活の鼓吹者であるやうに發展すれば,その方面からだけでも結核豫防の效果は擧がつたに相違ないのであるが,事實は中々さうは行かなかつた。

情報

ページ範囲:P.414 - P.417

日本帝國政に對する覺書
保健所機能の擴充強化に關する件
1.參考資料
a.日本政府に對する覺書,No. AG 710(1945年9月22日)MG,(Scapin48),1945年9月22日附
 題目 公衆衞生對策に關する件
b.日本政府に對する覺書,No. AG 323.31(1946年5月)PH,(SCAPIN945),1946年5月11日附
 題目 日本帝國政府の保健及厚生行政機構改正に關する件

公衆衞生學講座・4

衞生統計學とは—第一講

著者: 久保秀史

ページ範囲:P.393 - P.396

1.(1)統計學とは
 衞生統計學とは何であるかを述べる前に統計學の定義を知る必要がある。統計學の定義は,ある統計學者が「統計學の定義の統計をとる必要がある」と皮肉つた樣に,定説なき現状である。私は多くの定義の中から,取捨選擇して『統計學とはあらゆる現象を數的に調査研究して,事實の確認,原因の探究,法則の發見に努める學をいふ』と言いたい。

紹介

米國及び英國に於ける公衆衞生監視員制度に就て

著者: 尾崎嘉篤

ページ範囲:P.397 - P.403

米國に於ける公衆衞生監視制度
 Sanitationの仕事は歴史的に見ると,總べての病氣は動植物質が腐敗して發する一種の氣體によつて起るとなす瘴氣説Miasma Theoryに基いて,かゝる腐敗物汚穢物を除去することが健康を守る唯一の方法であると考へられたことに初まり清掃作業を第一の業務とじた。
 次でガス燻蒸法が發見せられ,すべての病原物は之にて破壊され無力たらしめると考へられた時代になると,このガス燻蒸が衞生當局の重要な業務となつたりしたものである。而しながら科學の進展はかゝる誤れる觀念を漸次訂正し,今日の如きは科學に基いた正しい道を進んで居るのである。かゝる變遷に對應してSanitary Inspectorの仕事は清掃,汚物除去等肉眼的な環境の淨化を專らとして居たものであつたが,社會の文化程度の進展と一般人の清潔に對する道義心の向上に伴ひ,衞生當局はこの方面への努力は漸次少なくて濟む樣になつて來た。とは云へかゝる環境の清掃化は衞生常局の基本的條件で,殊に衞生行政の進展の充分でない所では然りであつて,保健婦事業とか何とかの高度の行政は,Sanitationの仕事がある程度完成した後に着手せらるべきものである。この好例として第一次大戰後にユーゴースラビヤでStamparの行つた業績がある。

米國の醫育制度に就て

ページ範囲:P.403 - P.407

緒言
 我が醫學校教育制度の改革が叫ばれつゝある今日,以下米國に於ける同制度を紹介して參考に資したい。

保健所のペーヂ

山形縣下に於ける流水,飲用水及び下水の處理竝に對策

著者: 松野尾勝平

ページ範囲:P.408 - P.409

Ⅰ.流水使用禁止
 山形地區軍政部公衆衞生課は,縣衞生課竝に保安課を通じ流水使用を永久的に嚴禁した。本事實は將來縣の衞生改革に非常に預つて力あるであらう。其の要點は次の如くである。本縣市町村には多數の小川があつて水田の灌漑に利しておるが,衞生知識の低劣なる農夫が本流水を洗濯,野菜,食器の洗濯乃至は洗面に使用するので非常に危險視せられて居つた。特に下流地域に在住する住宅間には屡々傅染病の發生があり,又た野菜等を洗滌する結果その廢棄物が水流を妨げ洪水を惹起した樣な例も少くない。勿論かゝる水が飲料に供せらるることは好しからざる事實で,今般流水使用が禁止せられ飲用水は井又は一度煮沸した水でなければ使用出來ぬ樣になつた所以である。そして尚お又た腸チフス赤痢の流行季節に於ては漂白粉を用ひ水を消毒後使用することゝした。

最新の文献

衞生統計の教育に就て,他

著者: 久保

ページ範囲:P.410 - P.413

 嘗つては,衞生統計なるものは必要に應じてその時々の仕事をするものであつて,行政全般からは重要視されていなかつた。
 行政官たる者は物理學,生物學,社會經濟學及び醫學の知識を持つことが必要になつた。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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