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研究報告
靑酸ガス中毒死事件の環境調査報告
著者: 南條準1 中村章義1 江場悟1
所属機関: 1名古屋豫衞生研究所
ページ範囲:P.28 - P.29
文献購入ページに移動筆者は今回靑酸ガス中毒死事件の環境に關し裁判化學的鑑定の機を得たので茲にその概要を報告して各位の參考に資したいと思う。一般に船舶は國際衞生條約及海港檢疫法により主としてペスト豫防の見地より定期的に除鼠を行う樣規定されている。本件發生時N港に入港したR丸(742噸)は1950年2月19日午後3時30分より約2時間ボンベより靑酸ガスを放出して薫蒸する方法により除鼠を施行。
5時半頃船内各室を開放し,除鼠作業を受持つたTは午後6時順より靑酸試驗紙(醋酸ベンチジン法)を用いて30分毎に4回檢知を行つた。第4回目の檢的は7時半頃(稍うす暗し)であつたがこの檢知により靑酸の殘留なしと判定,この旨H檢疫員に報告した。報告を受けたHは之を過信して資材による檢知を行わず,全般内を約20分間臭覺のみにより巡檢しガス無しと判定し船員に乘船入室を許可した處,偶々機關長室に就寢した機關長E氏が翌朝屍體となつて發見され屍體檢察の結果によれば腹部一帶及右手の一部に赤紫色の死斑を認め靑酸による中毒死と判定された。(名大法醫學死因調査室)
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