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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生11巻4号

1952年04月発行

雑誌目次

論説

文部行政と厚生行政の調整

著者: 重田定正

ページ範囲:P.2 - P.2

 内務省のA事務官から,"まあ役人になつて見給え。乞食と同じですよ。3日やつたら,やめられませんよ"。という話のとおり,九十九里濱の海岸にある養護學校での生活をなつかしみつつ,厚生省系統に8年,文部省系統に4年もいたわたくしは,兩省の行政について何か意見をもつているだろうと思われても致し方がない。
 しかし退役した人間は,現在症について更に知るところなく,舊時代の舊人物か,現時代の人物でも過去の状態に關する知識だけか持ち合わせないのである。

集團檢査に使用し得る檢査法

著者: 福山富太郞 ,   佐藤德郞

ページ範囲:P.3 - P.8

 公衆衞生の最近に進歩した領域として,慢性疾患に力がそゝがれるようになつた。早期に疾患を發見するため,普通に自覺症状なしに働いている人々を對象とし,種々の検査が實驗されるようになり,本誌の海外文献欄に紹介されたようなMultiple screeningとしてこの検査方式が集團的に實施されている。個々の病人を相手にして検査する場合には多少時間のかゝる方法でも良いが集團検査室で多數の試料を扱うときには能率的な方法をえらばなければならない。そのためには検査法が意義あるものであり,容易で,安價で,しかも正確なものであることが必要である。私達はこれをindicatorと呼ぶが,このような方法を使用して數多くの中から疑わしいものを拾い出し,即ちふるい(screen)にかけて,疾病のありそうな人にマークをつけ,この選ばれた人々を更に精密検査にまわして疾病を確める手段をとらなければならない。
 検査の手段としては血清,細菌,レントゲン等の技術が入るが,特に臨床検査の部間をとりあげ公衆衞生上採用出來る種類のものを擧げて見たい。臨床検査は臨床部門に使用されることが多かつたため,比較的能率的でないものがあり改良の餘地があるので,私達は種々の検査法を試みて,indicatorとしての性格を持ち得るものを選び出した。

消毒藥としての逆性石鹸(其2)—(理論編)

著者: 增山忠俊

ページ範囲:P.9 - P.16

殺菌效力
 殺菌效力の本態に關しては種々の學説あり,今は之には觸れない。著者の言う「二擔體説」理論は消毒藥が細菌に對して殺菌效力を發揮するに至るまでの理論である事は前編に於て述べた通りである1)。從つて茲では其點に就て2,3の考察を記述して逆性石鹸の構造の問題にふれたいと思う。
 逆性石鹸に於けるlipophil groupは前編で記述した通りNに結合している2ケ〜4ケの原子團の綜合で解離の際は陽性荷電の部分である。このNに種々のRadicalを導入する型式に就いては簡單に記載した。

時評

簡易水道の長所と短所

著者: 廣瀨孝六郞

ページ範囲:P.17 - P.17

 簡易水道とは從來の慣例によれば,給水人口1萬以下のものをいい,全國都市水道數の約2/3即ち500近くを占めて居る。併し近く厚生省が全國的に國庫補助を與える對象として居るものは,人口3,000以下500迄というのであるから,更に小水道となるわけである。赤痢禍が東より西に進まんとし,然も其の原因が判然としないというものの一半の責任が水にある事は疑いのない所であるが,此の時に當つて厚生省が水の改善に力を盡し,簡易水道を全國的に奬勵せんとして居る事は誠に其の慧眼に感服するものである。併し簡易水道も水道としての長所と短所とを有する上に,尚簡易なるが故の長短が存在する。今之等の點に就いて少しく愚見を述べて見度い。
 水道の必要又は衞生上の效果に就いては,已に充分に認識されて居る事と思うが,之が完成すれば住民の健康上に種々な好影響を及ぼす,即ち不純な水を止めて完全な水を供給するから,水による傳染病の減退が著しい。水による傳染病としては,腸チフス,パラチフス,赤痢,疫痢,コレラ腸炎等と廣義には消化器系寄生虫病も含められるが,更に之に關連してMills Reinckeの現象がある。即ち水道による腸チフス死亡率の減退以上に一般死亡率迄も著しい減退を示すのであるが,特に小兒の消化器系統の病氣による死亡が減るといわれて居る。

公衆衛生學教室めぐり

日本大學公衆衛生學教室

ページ範囲:P.20 - P.20

 昭和17年の新春の1日探訪子は國電池袋驛西口から日大病院行バスに乘つて,板橋區大谷口町の日大醫學部に行き公衆衞生學教室を訪れた。此處は池袋驛から出る東上線の大山驛から數分で來られるので,學生の大部分は東上線の定期券を利用して通學しておるそうである。
 本校の敷地は東都北郊の閉静な武藏野の高臺の端に位しておつて,白銀の富士がよく見えた。校庭には醫學部專屬の廣い陸上運動場があり,水泳プールまでそなえておる。その先は校庭が森になつておつて學生の散策地になつておる。此間新制大學の審査に來た審査員一行は本校の環境は教育の場所として絶好であるとほめたそうであるが尤もなことである。

研究報告

百日咳ワクチンの豫防効果に就て

著者: 小山武夫 ,   岩谷耕二 ,   目黑勝郞 ,   長尾貞一 ,   岡田貫一 ,   高木剛一 ,   佐藤忠久

ページ範囲:P.21 - P.24

Ⅰ.緒言
 吾が國に於ける百日咳ワクチンの豫防接種は既に40年前より施行され,その効果に就ては多年賛否交々であつたが,近年になつて殆んど無效であることか多數の臨床家によつて認めらるゝに至つた。その理由は主としてワクチンの菌株が患者から分離後累代培養を繼續した陳舊のものであることゝ,接種量が僅少であることに基因したものゝようである。この點に關しては小山の夙に指摘する所であり,又小山著『百日咳の豫防1にも詳述してある。
 終戰後連合國軍總司令部の指示に基ずき,吾が國の百日咳豫防ワクチンは一定の基準を有し,國家檢定に合格したものゝみが販賣を許可せられ,その接種は法律の規定する所に從つて施行されるようになつた。而してワクチンの製法は主としてアメリカのミシガン州衞生局研究所の基準に則つとり,力價檢定法はKendrick及びその共同研究者2の提唱したマウス感染防禦試驗に最重點がおかれていることは周知の如くである。

ソーセヂ中毒事件の一考察

著者: 今井淸

ページ範囲:P.27 - P.30

 昭和25年9月東京都千代田區4小學校及び杉並區1小學校に給食による所謂ソーセヂ中毒事件が發生した。杉並校の場合は問題のソーセヂを2回續けて摂食したので疫學的には極めて貴重な資料が得られたので,こゝに發表する次第である。

農村における糞便處理と蛔虫及鈎虫感染—宮崎市本郷南方の調査

著者: 水島治夫 ,   山下正文

ページ範囲:P.30 - P.32

(本研究は文部省科學研究費の補助による)
 宮崎市本郷南方は,市内にあるが,靑島線に沿うた純農村である。この村は自家の糞便を,そのまま肥料とすることなく,厩肥,わら,草などにまぜて堆肥を作り,それを肥料とする風習がある。(本誌第10巻第1號,43頁參照)。しかし全農家が殘らず糞便を堆肥にするというのではなく,堆肥舎がなく露天堆肥を作るもの「肥し溜」に一時貯溜しておいて施肥するもの,中には便所から直接施肥するものなどがある。

蠅の生態學的研究 第2報—クロバエ科の季節的消長について/蠅の生態學的研究 第3報

著者: 佐藤孝慈 ,   加納六郞 ,   飯田鈴吉

ページ範囲:P.32 - P.35

1.緒論
 さきに著者等は公衆衛生第2巻第10號に「東京の蠅」と題して蠅の生態學的研究第1報を發表した。その中でクロバエ科Calliphoridae,ニクバエ科Sarcophagidae,イエバエ科Muscidae,の季節的消長を述べたが,クロバエ科(Calliphoridae).の季節的消長につき,1年2箇月の更に詳細な觀察を行つたので此處に報告する事とする。

日本製S.S.寒天培地の再檢討

著者: 中谷林太郞 ,   佐山榮子

ページ範囲:P.36 - P.38

まえがき
 戰後我國においてもS.S.寒天培地の利用は次第に盛んとなり,今や赤痢菌,サルモネラ等の分離培養には缺くべからざるものになりつつある。その理由は赤痢菌,サルモネラ等の腸内病原菌を選擇的に確實に檢出できる點,或は使用法の驚くべき簡便性等,從來の分離用平板培地に較べて幾多の優秀性があるためであることは,今更こゝに繰返すまでもないことは實地諸家の間には周知の事實であろう。
 現在我國の研究所,病院,檢査室等でこの培地を使用するには,自家で調製して用いるか,Difco製品等米國の製品を使用するか,或は日本榮養化學株式會社製の市販品を用いるかのいずれかの途しかないと考えられるが(他の會社製品も遠からず市販されるときくが現在までなお實現にいたつていない),前の2つの途は種々困難があるので,多くは榮研のS.S寒天培地を使用しているというのが實状であろう。我々の研究室では市販品が出る前よりS.S.寒天培地について基礎的な研究を行つて來ており,又昨年春東京都の傳染病院,米軍406 MedicalGeneral Laboratoryその他と協力して赤痢菌,サルモネラの調査を行つた際には,諸種の分離用平板培地の比較を試み,S.S.寒天培地としてはDifco製品と榮研製品とを用いた(1)。榮研の製品が市販にでて約2年になるが,その品質について種々の批判の聲をきくことがある。

8時間勞働のモデル作業の尿成分に及ぼす影響とその成因についての考察

著者: 石川知福 ,   佐藤德郞 ,   福山富太郞 ,   宮下武 ,   石川淸文

ページ範囲:P.38 - P.42

 今まで嚴密に均等な勞働負荷をあたえ,數日間にわたり尿成分の追求した報告が見當らない。本研究は1947年3月中旬に公衆衞生院人工氣候室に被檢者を起居させて實施したものであり,拘束9時間,午前と午後に10分ずつ,中間に晝食の休憩40分を入れ,實働8時間の作業とし,高さ30cmの臺を昇降するShneider testを行わしめた。作業時以外のときは實驗條件の監視,データの整理を實施した。温度條件は大體乾球17.5〜18℃,温球11.8〜13℃の間で實施し,夜間は同室に泊り,食事は一定とし,水分摂取は自由とした。服装はランニングシヤツ,ヅボン下,作業ヅボンの如き輕装とし,發汗は額,胸に少し汗ばむ程度であつた。
 被驗者の身長體重は1.167.7cm 56.3kg:2.164.7cm52.8kg;3.160.5cm 54.4kg:4.158.2cm 48.3kgであり年齢は3番の被檢者が17歳であるのを除き何れも20臺の學生である。

海外文献

Handbook of Nutrition/Handbook of Antibiotics

著者:

ページ範囲:P.8 - P.8

 アメリカ醫學協會の榮養審議會では,各專門家の執筆により榮養上の大きな問題について機關誌上に發表して來たが,今回一册の本にまとめられた。
 内容は榮養素の問題,榮養必要量榮養不足,食品の榮養價値の四篇に分れ,24項目にわたつた綜説より成立している。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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