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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生12巻2号

1952年08月発行

雑誌目次

論説

再訓練の必要性

著者: 佐藤恒信

ページ範囲:P.2 - P.2

 國家作用の1つとしての行政は,社會を對象とする。行政の對象である社會は,絶え間なく發展し,文化的向上の一途を辿つている。近代社會のこの著しい進展の流れに即して,社會行政が遲れずについてゆくためには,行政手段並びに行政經營の面において,高度の技術化が求められることは必然である。
 衞生行政が,社會行政の一分野である限り上述の2つの面の技術化を要求せらる點に於て決して例外ではあり得ない。むしろ衞生行政の本質から云つて,他の部面にくらべ,より高度の技術化を必要とするものである。即ち科學的の基礎づけ,技術的の裏打なくして衞生行政の滿足すべき實踐は考えられない。茲に衞生行政にたずさわる人の問題が眞劍にとり上げられなければならない意味があり,殊に衞生技術者の再訓練の必要性が認められる理由があるのである。

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赤痢の流行と防疫

著者: 豊川行平

ページ範囲:P.3 - P.7

 ここ數年來の赤痢の増加は全く驚異的であり,本年などは恐らく過去數十年來の大流行を示すのではないかと憂慮されている。かかる時期に當つて,一應赤痢の現況をながめてみることも無駄ではないと考える。

結核對策のあり方—特に職場における結核患者處理と療養保障について

著者: 東田敏夫

ページ範囲:P.8 - P.15

 集團における結核管理の目標は結核患者の増加を防ぐばかりでなく結核患者を早期に充分に療養させ速やかな回復を圖ることにある。昨今の勤勞者階級における結核療養の實態はどうであるか,又職場の結核管理がこれらの目標をどれほど果しているか,私は調査によつて得た知見を通じて考察し,進んで我が國における結核對策の當面の課題について卑見を述べよう。

肺結核外科の最近の進歩

著者: 鹽澤正俊

ページ範囲:P.16 - P.17

肺結核症の外科療法とは:
 肺結核症は非常に癒り易い反面,非常に癒りにくい疾患である。云いかえると,病巣が洞化の運命をとると,自然治癒の傾向が非常に少なくなるのである。慢性肺結核症が空洞の疾患であると云われるゆえんはこゝにある。こうした慢性肺結核症に對する積極的療法が外科療法である。
 外科療法は周知の通り,2群に大別される。その1つは胸成術や人工氣胸術等で代表される虚脱療法であり,他は肺(葉)切除術や空洞切開術のような直達的療法である。

無カタラーゼ血液症並夫に因る新しい齒性口腔疾患に就て

著者: 高原滋夫

ページ範囲:P.18 - P.19

 カタラーゼというのは廣く動植物の細胞内に存在する一種の酵素であつて,人間に於ては血中の赤血球中にその約70〜80%,爾余の20〜30%が白血球,血清,組織液,其他に含まれて居り,臟器としては肝臟に多く見られるとされている。人間の此の酵素は鐵と特殊な蛋白質から構成されて居り,その働きに就ては,今日尚祥細に判つていないが,細胞の呼吸に伴つて體内に産生される過酸化水素を分解處理し,之を酸素に代える機能を有し,生活上極めて必要な酵素であるらしいと漠然と考えられている。若し此の酵素を我々の體内から取除いてしまつた場合,果して我々が支障無く生活し續ける事が出來るかどうかという事は此の酵素の働きに關聯する問題で,極めて興味ある處であるが,夫の樣な研究乃至症例の報告は未だ内外に見られない。
 處が私は5年前の昭和21年暮に全く偶然の機會から血中に「カ」酵素を缺除している人―無カタラーゼ血液症(Acatalasemia)―を發見した。

外國軍用艦船等に關する検疫法特例について

著者: 輕部彌生一

ページ範囲:P.19 - P.20

 外國軍用艦舶並びに軍用航空機の檢疫は,昭和20年終戰までは前者については,海港檢疫法附則第13條(明治32年法律第19號)後者については,航空檢疫規則第22條(昭和2年内務省令第37號)の規定によつて,それぞれ實施されて來たが,終戰に伴い我が國が連合國軍の占領下に置かれてからは,これらの法令の施行は事實上停止せしめられすべて連合國軍所轄の軍機關により檢疫が行われた事情にあつた。
 昨年6月海港檢疫法等に代る現行檢疫法が制定されるとき,外國軍用艦船,軍用航室機の條項については,我が國が現實的にそれらの艦船,航空機に對して檢疫を實施することが出來ない占領下の當時の事情から檢疫法第22條において「外國の軍用艦船又は軍用航空機の檢疫については,別に法律で定める」こと規定し,我が國が現實にこれら艦船,航空機の檢疫を實施し得る時期迄その制定を待つこととした。去る6月18日法律第201號を以つて公布即日施行せられた「外國軍用艦船等に關する檢疫法特例」は諸外國と通常の國際關係を恢復するに至つた今日,我が國が獨立國として,7年振りに外國軍用艦船,軍用航空機の檢疫を自主的に實施しようとするものであつて,檢疫行政の面において獨立國として必要な法的措置を講じたものである。以下この特例を説明してみよう。

アメリカ生活の感想

著者: 白戸三郞

ページ範囲:P.23 - P.23

 昭和24年夏以來1年4カ月間,私はニユーヨーク市コロンビヤ大學で公衆衞生學全般を勉強し,更にテネシー州,テキサス州,アラバマ州,北カロライナ州,ミズーリー州,ミシガン州,コロラド州,カリフオルニア州等の各州を訪ね,衞生行政と學校保健行政との實際を親しく見聞する機會が與えられたので,その間に私の感じたことの一端を紹介して參考に供したいと思う。

愛育委員

著者: 岩崎辻男

ページ範囲:P.32 - P.33

 些細な出來事でも,それが下から盛り上るものであればこれほど強い力を發揮するものはありません。
 婦人の力によつて發展した愛育委員制度は此後の衞生思想普及に多くの事を教えてくれました。愛育委員制度發展の過程には次の樣な些細なエピソードが輝いております。

手紙

著者: 鎌田良二

ページ範囲:P.30 - P.30

 前略,先日は早速公衆衞生お送り下され厚く御禮を申し上げます。
 さて公衆衞生について甚だ厚かましいですが,私個人としてもまた同職者を代表して意見と希望を述べさせていただき度いと存じます。

醫藥隨想

勞働衞生の回顧

著者: 暉峻義等

ページ範囲:P.21 - P.22

 私達の醫學生であつたのは,明治の末から大正の初めにかけての時代あつた。正に日本の資本主義的發展の最盛期であつたのである。工業は紡績,製絲が主であつたが,製鐵,機械,造船,造兵という重工業は勿論,その基礎をなす鑛炭山も着々その資本的基盤を増大し,すべてが最大の利潤をめざして躍進していたのである。ひどい資本の偏重と勞働の搾取の時代であつたのである。この時代の中における醫學の教育,醫學の研究,醫術の實行はこれらの社會的環境とはおよそ縁のないものであつた。醫學はこの資本主義的に躍進する工業の現場には眼を向けることすらなかつた。國民全體をあげて工業的に進んでいる時代に,工業は資本と生産手段と勞働との3要素から成立しているという,社會科學の最も普遍的な原則すらも,醫學生は知らずに醫師となり醫學者となつた。醫學生も教授も,工場でいかなる勞働が日夜行われているかを見たものはなかつた。その人間の勞働力の搾取がやがていかなる暗影を國民全體に及ぼすかなどいう問題を聞くべき機會は絶無であつた。青山先生や入澤先生が時々外來診察の時間に診察の傍すばらしい社會批判を試みて,學生を悦ばせた。「東京は今に下水と糞攻めになるよ」などはその一つであつた。醫學の研究は自然科學的方法―とくに物理學化學の方法の醫學研究への導入に沒頭していた。あくまでも個人を對象とする科學的醫學の方向づけであつて,集團醫學―醫學の社會的方法などはその片鱗もなかつた。

座談會

結核豫防法施行一年を顧みて—下

著者: 石垣純二 ,   聖成稔 ,   鵜鳥修男 ,   鈴木佐内 ,   岡西順二郞 ,   砂原茂一 ,   有住一信

ページ範囲:P.24 - P.30

審査協議會
 聖成 いろいろの矛盾もあるんですがね。たとえば砂原さんのような,日本でも代表的な立派な療養所で先生方が診られて,こういう患者にはこういう治療が必要だ,從つてこれに該當する,という場合でも審査協議會にかかるわけですね。その保健所が東京都の保健所で,立派な審査員がお揃いのところならまだいいと思うんですが,患者が地方の人だと田舍の審査協議會にそれがかかるわけです。すると田舍によつては五人が五人,結核のエクスパートに委囑することの困難なものが澤山あるんですね。それで東京の大先生が診定されたものを審査するというのはおかしいじやないか,歴とした國立の療養所の場合はそこの御意見を無條件に承認していいんじやないかということは私,立派にいえると思うんですよ。ところが今度行政當局でそういうことを考え出しても,どこでその線を切るか,國立療養所といつてもピンからキリまであるんでね……。
 岡西 私のところじやレントゲン寫眞にも全部黒い紙を貼つて,申請のお醫者さんを伏せて,何も知らないでやるんですよ。それでも大體見當がつく。これは都内の國立療養所,或は都外の療養所,或はその他の開業醫か,その診斷がピタツとつきますね。「これは國立療養所だろう」というと「そうです」という。「これは都じやない」というとピタツと合う。だんだん向上して行くんじやないんですか。

地方だより

三原市結核世話委員會の活動

著者: 永田三六

ページ範囲:P.31 - P.32

設立の經緯
 結核患者の死亡が半減したと云うので今年は其の祝典が催された。眞に喜しいことで御同慶に耐えない。而し要するに國の結核に對する對策が積極化されて來たことゝ之に答える國民の協力に依るもので一般國民の結核に對する知識の向上と結核と云う病氣に對する關心が深められた結果である事は疑う餘地はない。而し結核患者の死亡が減少したことはそれだけ療養中の患者が増加したものと考えてもよいだろう。或は此のことが今後の醫療社會事業に與えられる大きな問題となるかも知れない。
 國は昨年結核豫防法をつくり結核の豫防患者の治療に多額の經費を計上したが相手は現在國民病として國民生活の中に浸みこんでいる結核である。全國700餘の保健所は今結核豫防撲滅運動を旗印に活躍して居るが之が如何に適正に運營されて,どれだけの成果を得るかは民間の協力なくして得られないことゝ思う。

統計資料のページ

昭和26年人口動態の概況—厚生大臣官房統計調査部

ページ範囲:P.34 - P.39

 當部では,人口動態統計毎月概數を月々發表してきたが,最近昭和26年々計分概數(1〜12月毎月概數+1〜12月各月訂正分)の製表を完了したので,この數字にもとづいて昭和26年の人口動態統計の概況を述べることにする。
 まず昭和26年においては,死産が増加傾向を繼續しているので,その他の出生,死亡,婚姻,離婚はすべて減少をを示している。そのうちで特に注目すべき事象は出生の顕著な減少と,死亡状態の改善の度合が著しいことである。昭和26年の人口1.000人に對する出生率は25.6であつて,昭和14年の26.6よりも低く明治33年に人口動態統計がはじまつて以來最低の率を記録した。一方26年の死亡率は10.0であつて,これも亦吾が國人口動態統計における最低率である。なかんづく結核死亡は激減して明治42年以來はじめて10万臺を割つて93,654人となり,人口10万人に對する比率は111.1であつて,1年前昭和25年の146.8に比較すると24.4即ち約4分の1減少を示している。

研究報告

福岡縣における人のブルセラ症—第1報農村及び都會在住者血清の凝集反應並に補體結合反應

著者: 大塚悟 ,   中西恭生

ページ範囲:P.40 - P.42

緒言
 最近人のブルセラ症Brucellosisに對する關心が深まつて來て我國においても公衆衞生上輕視されえない疾病の1つとしてとり上げられつつある。從來本症の人體感染例については國内においても比較的多くの報告があるが統計的に觀察報告したものは少く,竹内;千葉;山口;近藤,谷口,最近では赤澤,樋山;高木,加納,伊藤等があるのみではあるがこれ等を通覧しても本症の公衆衞生上に占める役割の大きいことが察せられる。我々は昭和25年以來當所に診斷を依頼して來た梅毒檢査血清及び不明熱患者血清について,Br.abortus Bangを用いて凝集反應及び補體結合反應を實施して來たが當地方における本症の汚染状況の一端を推察することが出來たのでここに報告したいと思う。

水,特に浴水の淋菌汚染並にその消毒に關する研究—第1報 水,特に浴水中の淋菌の生殘時間に就て

著者: 齋藤功 ,   小林正武 ,   大坪正一

ページ範囲:P.42 - P.46

 本報告は著者等の公衆湯場衞生に關する調査研究の一環をなすものであって,昭和24年〜26年度に亘つて續行せられ部分的には「水の淋菌汚染に關する研究」乃至「水,特に浴水の淋菌汚染に關する研究」として,東京都衞生局學會誌第5號(昭和25年1月),東京都立衞生研究所事業月報第16號(昭和25年7月及同昭和25年度年報(昭和26年3月),第7回厚生科學研究會總會(昭和25年11月)等に演述發表された。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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