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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生13巻2号

1953年02月発行

雑誌目次

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気象医学の研究(Ⅱ)—気象変化と生体反応(完)

著者: 鳥居敏雄

ページ範囲:P.3 - P.15

I)氣象病と気象学的作用因子
 ある特定の気象状態または気象変化によつて誘発される疾患,所謂気象病(Meteorotrope Krankheiten)は数多くのものがあげられているが,その中には充分に実証されていないものも多い。これを一通り数え上げてみると,1)2)3)23)
 感冐,リウマチ性疾患,瘢痕痛,断端痛,脊髄
 癆の電撃痛,肺炎,灰白脊髄炎,神経痛(顔面神経麻痺),猩紅熱,百日咳,ヂフテリア,喉頭クループ,虫垂炎,胆嚢炎,手術後肺感染症,マラリア発作,心嚢炎,肋膜炎の滲出,肺結核喀血,気管枝喘息,蕁麻疹,濕疹,皮膚瘙痒症,卒中発作,腦栓塞,心筋梗塞,狹心症,胃,十二指腸潰瘍出血,胆石,腎臟結石の疝痛発作,癲癇発作,子癇,小兒テタニー,更年期障碍,種々の神経症,緑内障,フリクテン,リウマチ性紅彩炎
 病死,自殺等があげられている。

新聞に表われた衛生関係記事の分柝

著者: 山本二郞

ページ範囲:P.16 - P.21

緒論
 行政が最もスムーズに推進されるためには,その目的及び内容が国民の間に良く滲透し,理解され,且つ,国民の協力を得なければならない。従って行政官としては,行政の民間への滲透度の測定について常に意を用いる必要がある。
 民間滲透度測定方法としては,与論調査や,一定方式による国民のメンタルテスト法等があり,又,実際に一つの施策を実施した場合に,定期間後表われて来る統計学的数字によっても察知される。更に他の方法として,一つの施策が実施された場合,それに対する国民の協力態度や,批判の程度の分析をなすことによつてもその目的を達し得る。例えば,マス・コムミユニケーシヨンの最も大きな媒体の一つである新聞面に表われた衛生関係記事を分析することによつても,衛生の滲透度を間接に察知されるわけである。

結核療養所入所患者の実態

著者: 岸田壯一

ページ範囲:P.23 - P.26

 現今の状態に於て結核患者が如何にして発見せられ,如何なる経路をたどつて正当なる治療を受けるに至るかをうかがつて見ることは必ずしも無駄ではない。結核患者の指導に関する記事は新聞雑誌等に数多く掲載されて居り,ラヂオでも毎日の如く放送されているのに,実際に結核にかかつた人々は徒らに左顧右べんして,日時と金銭とを浪費し,その間益々病勢の惡化を招き,或は治療の機会を失するようなことが珍らしくない。著者はこのような観点から国立中野療養所の入所患者の主として入院前の状態を調査してみたので,ここにその概要を報告して,大方の批判を仰ぎたく思う。固より患者の問診に重きをおいたのであるから,記憶の誤りや認識の正しくない点もあるであろうし,又各種各様の状態を統計的に取扱う無理も生じて来たのであるが,今後の結核患者の治療指導に若干でも参考たり得れば,誠に望外の幸と思つて発表する次第である。
 昭和20年9月末日現在国立中野療養所入所患者921名(男583名,女338名)につき調査したのであるが,先ず患者の年令構成を検討して注意すべきことは患者の年令層が変化したことである。即ち対数グラフ紙上にかいた第1図に見る如く5才別年令分布曲線に於ては男女共に25〜29才の区劃に最も高い山があることで,このことは過去に於ける諸統計と甚だ趣を異にするところである。

ノーベル賞を捷ち得た黄熱ワクチンの研究

著者: 森島生

ページ範囲:P.27 - P.28

 注射数約五千万に垂んとする黄熱ワクチンの発見者Lax Thaildr博士は人の健康保全の最大の貢献を為した廉で1951年度のNobel賞を受けたのである。
 Theiler博士は之に就て語つて謂く,吾々は真に幸福である,勿論我々は必死の努力をしたが。此賞よりも尚大きいのは吾々は偉大なる幸福を得たことである。吾々が今此をワクチン17-Dと命名はしているが,之を発見する以前,数限りない間違を犯してをつたかも知れなかつた。若し吾々が之を発見しなかつたなら,吾々以外の科学者が黄熱を管理するワクチンを確かに発見したであろうと。

論説

日本医師会

ページ範囲:P.2 - P.2

 最近田宮医師会長は,世界医師会に出席されて,帰朝された許りである。未だ公式には何等発表は無い様だが,いずれ旅嚢は,日本医師会へのお土産でふくれているにちがいない。日本医師会もこの辺で世界水準にまで成長する時期ではあるまいか。
 医師会とは何だと云えば医師の集りにはちがいないが,労組かと云えば違う様だし,同業組合と云つても違わねばならぬ。他に同種の物をもとめると,歯科医師会,薬剤師協会を除いては,教員組合は労組であり,弁護士会は,3つに割れており,画家の会,音楽家の会は,さらに,細分されている。小説家等となると,全くとりとめがつかぬ。自由職業者の内,なぜ医師だけが1つの団体にまとまらねばならなかつたろうか。

研究報告

位相差顕微鏡による2,3原虫類の観察に就て

著者: 橋本雅一 ,   水原敏知

ページ範囲:P.34 - P.35

 吾々は,細胞や微生物等の生態観察に極めて適する,最も理想的な光学顕徴鏡として登場して来た位相差顕微鏡を用いTrypanosoma gambiense,Trichomonas elongata及びPlasmodium vivaxの生態観察を行い,それらの最も観察し易い条件を検討し,2,3の新知見を得たので報告する。尚,使用した顕微鏡は千代田光学の製品であつた。

蛔虫感染経路に関する研究(Ⅱ)—洪水後道路上に於ける蛔虫卵の消長に就いて

著者: 松崎義周 ,   今園義盛

ページ範囲:P.35 - P.37

 緒言 洪水の被害の甚大なる事は今更申す迄もなく,特に市街地に於ける場合は惨害甚しく,時に汚染せる飲食物を介して伝染病流行の原因となる事があるので,防疫の見地からは常に重要視され種々対策が講ぜられて居る。市街地並に之に近接せる地域の洪水は,出水と同時に下水,汚水溜,家庭の便池或は糞尿溜が溢れ出,病原細菌は勿論之等に含まれている多量の腸内寄生虫卵も浸水地域全体を広く汚染する事は当然想像される処で,之等の虫卵は飲料水に浸入,或は飲食物食器等を汚染,又は手指衣服等に附着,其の他種々なる経路を経て,腸内寄生虫感染の原因となり得る可能性は充分考えられ,之等の事から洪水は寄生虫学的観点からも重要なる意義があるものと考えられる。
 筆者はこの観点から昭和24年8月関東地方を襲つたキテイ台風の余波を受け浸水した東京都内住宅地域道路上の土壌,塵埃中に含まれる腸内寄生虫卵特に蛔虫卵に就いて,其の消長を観察したる処,興味ある成績を得たので茲に報告する。

蛔虫寄生のこんなにすくない小學校(宇田川小学校)がある!

著者: 村江通之 ,   作野廣 ,   河津博 ,   村江潤夫 ,   坂口平 ,   美住博子 ,   遠藤菊子 ,   石丸利之

ページ範囲:P.37 - P.40

 由来蛔虫症は我国における寄生虫病中の第一位を占め,全国的に広く且つ濃厚に分布していた。それが戦時及び戦後の種々なる不自然な生活環境条件により増加して来た。
 我国における蛔虫の感染状況に関しては,各種の官庁,団体,研究者の手に依つて行われた調査がおびたゞしい数にのぼつている。又地方的にも多くの資料がある。これらの成績は調査方法によつて多少実際よりも低くなり勝であるが,それでも尚一般に高率を示している。ここでは紙数の都合により詳細なる文献の紹介は省略することとする。

屎尿の藥剤處理による蛔虫感染予防の可能性

著者: 松村龍雄 ,   大澤正夫 ,   織田敏郞 ,   中澤精二 ,   由上修三

ページ範囲:P.40 - P.44

 蛔虫問題,広く寄生虫問題は,結核問題と共に我国の公衆衞生に課せられた重要課題である。私共は昭和23年以来蛔虫感染予防の研究を行つて来たが,最近ようやく屎尿の薬剤処理による蛔虫感染予防の可能性について,明るい見通しを抱き初めているので,ここに報告する。

立川市内に頻発せるガソリン臭井戸水の系統的調査研究(第三報)

著者: 佐藤乙一 ,   根本永 ,   渡邊周子 ,   植田栄一 ,   飯田貢市

ページ範囲:P.49 - P.50

1 緒言
 立川市内を始め近接町村の井戸水がガソリン臭をおび,しかもそれが社会問題化してから早くも5カ月は過ぎ去つた。余等が第1報で報告したように,昭和23年から今年に至るまでの綜合的な研究結果から考察すれば,夏期相当範囲に亘つて蔓延した発臭地域も,10月下旬から11月中旬にかけては,著しく縮少する傾向にあつたにも不拘,1)本年は今になつても尚著しく拡大さえしている現状である。殊に"燃える井戸"とさえ言われた井戸水が更に同じ様な状態で発臭地域内数個所に出現し,此の近辺の人々を戦慄せしめている。中には今まで無臭無色だつたものが急にガソリン臭を発し,僅か1カ月足らずで黄褐色と,著しい溷濁を呈し,飲料には勿論洗濯等にさえ使用出来なくなつた例も亦次第に多くなつて来たようである。しかしこの様な訴をしてくるものの井戸全部が油類による汚染ばかりではないことは勿論である。例えば自家或は隣家使用の吸込溜或は便所等が原因となつて汚染される場合もあり得るが,之等は細菌学的検査或は化学的検査の成績を参考に,現場調査を行えば容易に鑑別出来るものである。以上のガソリン臭を発する原因については既に基地内から原因を究明し,修理を行う旨の文書をうけたことを報告し,余等は単に之だけが原因ではないと思われる資料も併せて報告した1)2)

三重大学農学部集団赤痢概況

著者: 杉村巧平 ,   渥美三千里

ページ範囲:P.44 - P.46

 緒言 昭和27年6月末国立三重大学農学部に集団赤痢(駒込BⅢ型)が発生したのでその概況を報告します。

齲蝕とその予防に関する実驗的研究(第3囘報告)—微量弗素が齲蝕細菌の糖分解能並びに殺菌作用に及ぼす影響について

著者: 帆足望

ページ範囲:P.46 - P.49

はしがき
 弗化物が齲蝕細菌の発育並びに酸産生に及ぼす影響については既報1)2)の如くである。即ち高濃度溶液に於てのみ発育並びに糖質醗酵阻害作用があつた。
 微量弗素と細菌との関係については,1939年H. T. Dean,F. Jay & F. A. Arnold3)が斑状歯地区住民の口腔内細菌数について報告したが,之れは細菌数と弗素との関係を究明したに過ぎずして,その細菌の細菌学的研究殊に酸醗酵作用の強弱有無については内外を通じて其の報告は皆無である。一方水道水弗素投入に関しては米国では既に実驗期を脱して応用期に入つていることは衆知の事実である。我が国に於ては今春2月より京都山科の水道水に弗素投入されている。然し乍ら之れら弗素投入に関する衞生細菌学的研究は内外を通じて殆んど皆無の状態である。195,年平田氏4)はNaFに於ては水中雑菌の殺菌作用は認められぬが,NaFHEは井水・川水に対しては0.005%と云う微量の添加により室温にして6時間後には水中雑菌を完全殺菌し,更に汚濁せる下水に対しても僅かに0.015%〜0.02%の添加により水中雑菌は室温にて6〜12時間後には完全殺菌さるゝことを認めた。1952年白土・池田氏等5)はNaFが水中乳酸菌の殺菌作用に及ぼす影響を検査した結果,少くとも100PPM以上を必要とすると報告している。

随筆

30年前のスキーの思い出

著者: 大野精七

ページ範囲:P.22 - P.22

 私が北海道大学新設医学部の教授候補者になつたのは大正8,9年頃で,寒い札幌にすむにはスキーかスケートでもしなければ生活が面白くないだろうと考え,大正10年3月東京大学の学生監をされスポーツを奨励されていた河本禎助さんが主となつて越後の赤倉温泉で春休みを利用してスキー講習会を開いてくれたので,私は喜んで小島三郞さんと一緒に行つたのが最初のスキーである。神社の鳥居が半分雪の上に出ていた附近でレルヒ少佐直伝の阿部,高橋両氏がテレマークやクリスチアニアを見せてくれた。私はローラー・スケートをやつていたのでスキー初学者としては幾分楽であつた。関温泉を見おろせる處まで行つてザラメ雪をすべつて帰つた際,何偏か顛倒して顔をすりむき,新調の雪眼鏡をなくして残念に思つたこがある。今は故人の林春雄先生は2名の坊ちやんと来ておられた。宿の湯船は龜の頭からお湯が流れ出ていたので誰やら笑つた事をおぼえておる。スキーはアルパイン・スキーでストツクは長い單杖の人もいたが,私は短い複杖をかりてつかった。靴は軍靴をはいたのでスキーして帰るたびに靴下はずぶぬれとなり,かわかすのも一仕事であつた。
 私はその年の11月日本をたって翌11年(大正)の1月マルセーユをへて独逸に入り,今でもスキーで有名なフライブルグ大学のアシヨフ教室にはいつた。三田村篤志郞,神谷甫彦,大野省三,鳥海克巳,牧野融,木下良順君等と一緒であつた。

統計資料のページ

昭和26年における急性灰白髓炎について

著者: 曾田長宗 ,   石田保廣

ページ範囲:P.29 - P.33

 法定伝染病については,いろいろくわしい資料があり,その疫学についても研究されているが,そのほかの伝染病については資料が乏しく,急性灰白髓炎についても毎月伝染病簡速統計月報において,都道府県別に患者数が公表されているだけであつて,その性別,年令別患者数のような基礎的な事項についてすら従来は調査されていない。今回ここに示す資料は厚生科学研究費及び都道府県衛生部の援助によつて調査集計されたものの一部であつて現在唯一の全国的資料である。
 第1表に昭和23年より昭和26年までの最近4カ年の急性灰白髓炎の患者数,死亡者数及罹患率,致命率を示した。それによると急性灰白髓炎の屆出患者数は届出の実施以来,年々増加をしめしている。(昭和27年には可なり減少した)。一方致命率は届出患者の増加に反比例して減少して,届出数の最も多い昭和26年が最も低い。一般に患者の発生が多いと致命率が低くなると云われているが,届出状況の良好となつたことが大きな理由のように考えられる。

海外文献

齒磨にChorolpyll使用成績,他

著者:

ページ範囲:P.15 - P.15

 クロロフイールム添加によつて,どれだけの差を普通歯磨との間につけ得るかをネブラスカ州のBoy's towrで歯科医監督の許に589名の児童について試驗された。詳細は不日発表されるが差当り歯齦炎についての成績が公表された以上児童の内約半分にはクロロフイール入の練歯磨を其他には普通の練歯磨を,毎朝食後と夜就床前計1日2回使用せしめた。
 急性歯齦炎について使用開始後2カ月後にはクロロフイール含有のものを使用した子供は28%もよくなつた。クロロフイールなきものは其儘だつた。クロロフイールの分量を大小2種に分け使用させたが大量の方は70%小量の方は58%も治癒率に差があつた。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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