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特集 精神衞生
兒童の精神衞生
著者: 高木四郞1
所属機関: 1国立精神衞生研究所兒童精神衞生部
ページ範囲:P.19 - P.23
文献購入ページに移動児童の精神衞生は今日の精神衞生の中心課題であつて,「精神衞生」というともつぱら児童だけが問題となるかのごとき観を呈しているほどである。それはなぜかというと,児童期は精神がその発達の途上にあり,性格が形成されつつある時期であつて,精神衞生の実践を最も必要とする時期だからである。乳幼児期から学童期へかけての育児・しつけ・教育のしかたの如何によつて,将来の精神の健康度が決定されるといつても過言ではないのである。したがつて精神衞生の実践が最も効果を発揮し得るのは児童期であり,これが精神衞生において児童期が重要視される理由である。
精神衞生は人も知るごとく,1908年,米人ビーアズ(Clifford W. Beers)によつて始められた社会運動がそのはじめであり,爾来学理的にも実践的にもアメリカ合衆国が発展の中心となつてきたものである。したがつて精神衞生の基礎理論となつているのは,アメリカで発達をとげたいわゆる力動精神医学(dynamic psychiatry)である。今ここで力動精神医学について詳しく述べる余裕はないが,一口にいえばそれはアドルフ・マイヤー(Adolf Meyer)の精神生物学(psychobiology)及びフロイド(Freud)の精神分析等の理論を根幹とし,その上に発展して来たものである。
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