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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生14巻3号

1953年09月発行

文献概要

特集 精神衞生 隨想

文明生活と精神衞生

著者: 竹山恒壽1

所属機関: 1慈惠医大神経科教室

ページ範囲:P.28 - P.29

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 人間の生活が形式的にも内容的にも進化してゆくことは,精神衞生の上からいつても良いことのように思われる。しかし,文明Civilizationとは文化Culturのことではないから,生活の外形的な面での進化が強調されて,内容が伴わないことが多い。形式は新しく内容のともなわないところに,文明の誤用による弊害がうまれる。また,逆に理念のみ先走つて,非文明的な生活形式を守りつづけている場合もある。低く暮し,高く思うという場合で,これは現実適応度の低さを語つているものである。一般に,精神生活の向上は物質生活の向上と比べて,微々たるものであるから,文明生活とは現実的な生活形式の進歩を意味するものであるらしい。人間の生活が文明的になること,それは精神衞生的に望ましい結果だけを生むものであろうか。
 文明社会に於て,精神衞生的に改善された部分は,勿論,数多くある。そのよい例は梅毒に基く進行痲痺が近来激減していることである。進行痲痺のように,梅毒の治療法なり予防法が進歩するという単純な原因によつて,発病率が減少するものは,問題が簡単である。しかし,近代生活の形式そのものが起因となり得る幾多の精神不健康状態が存在することも忘れてはならない。これらは将来も増加の一途をたどるであろうし,「文明病」と名づけられて,いよいよ大きくとりあげられることになるであろう。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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