icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生14巻5号

1953年11月発行

文献概要

特集 最近の性病問題

梅毒の治療をめぐつて

著者: 樋口謙太郞1

所属機関: 1九州大学

ページ範囲:P.9 - P.14

文献購入ページに移動
はしがき
 『梅毒はついに消滅した』といえばそんな『馬鹿なことが』と反問されるに決まつている。しかし現在新鮮梅毒は全くみられないことは事実である。サルバルサンの発見当時これにてTherapiamagna sterilisansの理想は実現したとし,厄介な梅毒はこの世の中から消え去るだろうとの期待が持たれたが,実際には決して減少せず,ことに今次大戦の直後の蔓延は著明にして,なかんずく惡性顕症梅毒の多発がみられた。それにもかかわらず昭和25年頃より漸次減少して来た早期顕症梅毒は昨年末より本年にかけてはその1例にも遭遇しなくなつてしまつた。伝染源を調査しても新しい感染を認めない。かかる事実は公衆衞生的に非常に喜ばしい現象であるが,われわれ梅毒の研究を担当するものにとつては真に新鮮梅毒が消滅したものであるかどうかに疑を抱き,さらに今までかつて見られなかつた減少の理由について関心を深くするものである。
 また現在残存し,われわれの日常治療の対象となつている晩期潜伏梅毒では血清反応の陰転困難な症例即ちいわゆる抗療性ないし抗血清反応性梅毒が多く治療に手こずるものであるが,かかるものの意義と処置法についてしばしば質問を受ける。ゆえにこの辺の消息を需められるままに,駆梅療法の沿革ならびに最新療法の概説に附記して簡単に解説しておきたい。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら