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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生15巻2号

1954年02月発行

雑誌目次

特集 公衆衞生に必要な諸検査 論説

衞生検査技術者の身分

著者: 秋元壽惠夫

ページ範囲:P.1 - P.1

 戦後,わが国民の保健衞生に関連が深い業務にたずさわつている技術者に対し,つぎつぎに身分法が制定せられ,それぞれの資格,養成,免許その他に関する基準が,一応定められたことは,すでに周知の通りであり,一昨年国会を通過した診療X線技師法もそのひとつである。
 しかるに,この診療X線技師とは,いわば車の兩輪のような関係を保ちながら,同じく公衆衞生を健全なかたちで運営する上においても,はたまた一般診療行為を近代化,科学化する上においても,缺くことのできぬ業務を担当しつつ,日夜奮鬪しているいまひとつの医療技術者の系統があるのであるが,この人たちに対しては,いまなお依然として何らの公的資格も与えられず,したがつてその職階は,職場,職場によつて異り,全く不統一きわまるありさまで放置されたままである。

淋菌の検査法

著者: 市川篤二

ページ範囲:P.2 - P.5

はしがき
 典型的な急性淋疾の症状を呈する患部から得た檢査材料について淋菌を検査することは,臨床家にとつても決して六カしいことではない。即ち膿の塗抹標本をつくりメチレン靑染色を行えば,双球菌が多数に検出される。此の双球菌が膿球内にあつて,その上グラム陰性であれば,淋菌と診断して先ず絶対的に差支えないといえよう。
 ここで"いえよう"と稍々曖昧な表現を用いたのは,上に列記した条件がかけると診断を誤ることがあるからである。即ち塗抹標本だけをみて膿球内にグラム陰性の双球菌があつても,それは必ずしも淋菌ではない従つて患者は淋疾ではないことが知られている。

合理的な梅毒血清檢査の実施法

著者: 鈴木鑑

ページ範囲:P.5 - P.10

 Ⅰ.
 全国各地の検査所でおこなわれている梅毒血清検査法の種類は,相当多数に上つている。昭和28年3月,東京大学血清学教室の集計によると1),510の検査所乃至検査室において,補体結合反応に11種類,沈降反応に12種類となつている(第1表)。
 従つて,実際にはもつと多いものと想像される。

赤痢菌の檢査法

著者: 福見秀雄

ページ範囲:P.10 - P.14

 赤痢菌の検索,検査の方法については,厚生省編纂の「術生検査指針」中に詳しい。けれどもこの衞生検査指針は尚一つの点に於て考慮を払うべき処が残つているように思われる。というのは,この指針では,サルモネラ検査指針,赤痢菌検査指針が別々に取扱われていて,サルモネラか赤痢かいずれともまだ判然していないものをこれから検索検査しようとする場合に,統一的な術式が統合総括されていないのである。
 又一方では上の二つの指針の他に細菌性食物中毒検査指針(総論)なるものがある。これは細菌性食物中毒検査指針(総論)は,およそ細菌性食物中毒を疑わしめるようなすべての事件の病原菌検索を総合的にやらんとする術式統合の企てであつて,サルモネラ,赤痢菌にかぎらず,パラ大腸菌プロテウスから更にはブドウ球菌,連鎖球菌,及びボツリヌス菌に到るまでを統一的,系統的に食物中毒の検索という立場から取扱つている。丁度無機化学の系統定性分析のように,基本検索様式をさだめて系統的に検索し,各病原菌を基本検索系統の中で次々にあたつてゆくやりかたである。だから検索術式ははなはだ系統化されていてその基本検索にのぼつた細菌は次に各論的な性状検査,同定に移ろうというのである。

大腸菌の檢査方法に就いて

著者: 安斎博

ページ範囲:P.14 - P.23

まえがき
 腸内細菌定住地は専ら腸管内であり,血液,尿その他各種の臓器内に侵入するのは特別の場合に過ぎない。従つてこれらの菌の分離は主に糞便内より培養することになる。Salmonella,Shigella等の既知病原菌は各種の分離培地上で特異の集落を作るし,又従来からその分離技術に熟達しているので,それ程困難ではない。しかし,その他の腸内細菌は非病原菌として,吾国では余り注意されず,従つて分離鑑別方法も余り考慮されていなかつた状態である。
 一般に大腸菌と云う名称は広く使用されているが,その定義は甚だ曖昧なもので,水質検査や食品関係に於ける検査に於いては,大腸菌とは専ら乳糖分解性の大腸菌を目標としている。又最近KauffmannによりArizona,Ballerup-Bethesda菌屬に分類された腸内細菌も,従来は所謂パラ大腸菌(乳糖非分解性大腸菌)として取扱われていた。彼はこれらの菌を大腸菌屬に入れるよりも,むしろ広義のSalmanella菌屬に含めた方がよいと主張しているが,ここでは便宜上これらの菌も広義の大腸菌屬の中に入れることにする。故にここでは大腸菌と云う定義の中にはEscherichia(狭義の大腸菌),Klebsiella(エロゲーネス菌又は肺炎桿菌),Alkalescens-Dispar,Arizona,Ballerup-Bethesda等の菌屬を含むものと諒解して戴きたい。

寄生虫の檢査

著者: 小宮義孝

ページ範囲:P.23 - P.29

 広く寄生虫といえば原虫類も含むのであるが,ここでは専ら蠕虫類に屬するものを取り扱うこととする。蠕虫類の大多数のものは腸管系統(肝を含む)に寄生し,したがつてそれらのものの虫卵は糞便中にまじつて体外に排泄されてくるので,この場合には便の顕微鏡検査を行い虫卵を検出することが出来る。蛔虫,鈎虫,鞭虫,東洋毛様線虫,肝吸虫,メタゴニムス(横川吸虫,高橋吸虫),広節裂頭条虫,ナナ条虫(矮小条虫),縮小条虫などがそれである。しかし腸管内寄生虫でも嶢虫は肛門周囲の粘膜に産卵するので便中に虫卵が検出されることは極めて稀である。又有鈎条虫,垂鈎条虫も虫卵が便中に混在するのは稀である。これらは虫体の片節が便中にまじつて出てくるので,片節の検出によつて虫体の存在を確認する。
 なお,日本住血吸虫は門脈系統の静脈支別内に寄生しているのであるが,産卵は腸粘膜近くの小静脈枝内で行われ,ここに産出された卵は附近の組織内に逸脱し,その部に炎症を生じ,腸管内に破れ,したがつて虫卵も腸管内に出で,便と共に排出される。又肺吸虫卵は主として喀痰内に見出されるのであるが,しばしば喀痰が呑みこまれ,したがつて虫卵が糞便中に見出されることが多い。

塵埃測定法

著者: 芦沢正見

ページ範囲:P.30 - P.35

1.塵埃測定の意義
 公衆衞生上塵埃が問題となるのは,現状では何といつても鉱山や工場の機械が時々刻々つくり出している空中浮遊塵埃であり,その測定は人体への危害を察知し,対策を立てる上に役立つよう心がけられねばならない。塵埃の害から免れる殆ど唯一の途は,発塵をなるべく少くするように設備や装置を改善することでしかないのであるから,もしも測定の結果少くとも恕限度を超えるような場合は常に設備装置の改善を必要とし,衞生工学と公衆衞生技術者の協同作業が始められねばならぬことを示唆しているものである。
 では塵埃の採取はいつどんな風に行えばよいのだろうか。塵埃飛散の度合は,発塵を伴う操作によつて極めて大きく動揺するものであるから,調査の対象となる発塵工程を分析的によく承知していて,その作業操作に呼吸を合わせるようなつもりで採塵をしないと,測定成績の意味を大半失つてしまうようなことが少くない。空中浮遊塵埃の害は吸入によつてひきおこされる塵肺が一番問題となるので,作業現場で作業者の鼻腔の高さで採塵するのである。

食物中毒菌の檢査法

著者: 八田貞義

ページ範囲:P.35 - P.45

まえがき
 食物中毒の原因菌として今日れつきとした細菌はサルネラ,ブドウ球菌,ボツリヌス菌の3者である。なおこの他に細菌性と推定される中毒で原因のはつきりしないものがある。かかる場合プトマイン説が頭をもたげやすいが,一般論として食物中毒の原因を有毒アミン(プトマインと呼ばれ,そして細菌の蛋白分解から生ずるPutrescine,Cadaverine,Methylamineなどの有機塩基は,経口的に与えても毒性はない。他の分解物でも経口的に与えたのでは毒性のあるものはない)に帰して考えるよりも,食物中で繁殖した菌或はその生産物の大量摂取という事実を重要視すべきである。
 Jordanその他の研究者は各種の菌の増殖した食品が問題であるとし,それ自体は無害なE. coli,Proteusmorganü,Milk streptococciでも適当な食物中に好条件で繁殖すれば人の腸管系粘膜に障害をあたえる有毒物質をつくり得ると推測した。これはよい考えではあるがしつかりした証明がない。ただし近来の流行病学的,細菌学的知見は次第にこの考えに傾いているようである。したがつて昔のプトマイン説が復活したように見られるが,現在考えられている毒物は蛋白の分解によるものでなく,食物の外観や味を変えずに繁殖し得る菌の増殖によるものであることが前と異つている。

水の検査法—飮料水の水質判定の意義

著者: 岩戸武雄

ページ範囲:P.45 - P.53

1まえがき
 水質試験の意義は一般に
  (1)水の汚染を単的に推理立証する

結核菌検査の心構え

著者: 小川辰次

ページ範囲:P.53 - P.55

 どの本を見ても,結核症の臨床診断は結核菌を可検材料の中から検出する事が最も確実な方法であると書いてある。成程それに違いない。偶然に迷入した結核菌を除外できれば,喀痰中に結核菌を証明すればツ反応はどうであつても,X線写真がどうであろうとも,呼吸器系のどこかに病巣があるに違いないし,膿中に結核菌が証明されればそれは結核性のものに違いない。結核菌の検査は単に診断と云うだけでなくて,治療の方針,予後の決定,健康管理を初めとして,結核症を論ずる場合には,X線写真と共に,缺く事のできない重要な検査であつて,しかも,菌の動きは,X線写真などと違つて,敏感に薬病勢を反映させるものである。随つて結核菌の検査は正しく慎重になさるべきである。
 私はここに,どの様にすれば正しい検査が行われるか,殊に化学療法が行われる様になつてからは,どの様な心構えが必要かについて,申し述べて見たいと思う。

公衆衞生における檢査業務

著者: 長友浪男

ページ範囲:P.56 - P.60

1.検査業務の意義
 現代の公衆衞生行政は,真に科学行政でなければならない。即ち,公衆衞生の向上発展は,科学的な基礎に立つて始めて望み得るものであつて,科学に立脚しないものは,如何に些細な事柄であつても,凡そその意義を失うといつても過言ではあるまい。
 さて,この公衆衞生行政の中心的課題として考えられるものは,疾病(特に伝染性疾患)の予防治療そして防疫の諸施策であろう。さてこの予防治療,防疫が適切に,且つ機敏に実施されるためには,先ずもつてその疾病が因つて以つて起つた原因の科学的な確認即ち「診断」が必要となる。一般的には,診断そのものは臨床的のみにでも下し得るものではあるが,多くの場合,更に適正な診断を下すためには,その病原を確認し,又類症鑑別を実施することの必要が生ずるものである。このことは,原因不明の伝染性疾患の突発に対処して防疫措置を講ずるような場合には,特に強く要求されることなのである。

Q熱(下)

著者: 北岡正見

ページ範囲:P.67 - P.73

 以上(前号参照)の所見を要約するとQ熱の感染は家畜と接触するか,家畜の近くに住むか或は生牛乳を飲むかにある。しかしQ熱研究者を下宿させて家人が罹患したり(Beeman75),Q熱の研究者の衣類を洗濯した洗濯屋が罹患したり(Oliphant65),更に驚くべきことは汚染地からの荷物を介して受取人が罹患した例があるのである。このような出来事はC.b.の抵抗の強いことと感染源のC.b.が塵埃を介して空気中に飛散するためと解される。

研究報告

伝染性下痢症の伝染力に就いて—特にその家庭内二次罹患率の觀察

著者: 平山雄 ,   加藤寬夫

ページ範囲:P.74 - P.76

緒言
 欧米では以前から注目せられていた伝染性下痢症は,昭和22年以降わが国にも大流行を来し,われわれ疫学者に新らたな研究課題を与えた。本症の疫学に就いては,既に(1)小島,福見,石丸等によつて報告されている。われわれは今回伝染性下痢症の伝染力を中心とした疫学的研究を行つたので報告する。

井水の飮用による泉熱の感染発症試驗

著者: 兒玉威 ,   山田健次郎 ,   田中博 ,   吉田忠

ページ範囲:P.77 - P.79

 泉熱の集団発生における感染場所及び感染経路については今日なおその7割が不明であつて,本症の感染経路は恐らく頗る複雑多岐なものでないかと考えられているが,爆発的に集団発生することが多いので,昭和16年横浜市鶴見区における集団発生当時から私共は先ず第一に経口感染に注目した。厚生省公衆衛生局防疫課の調査によれば,昭和2年5月から26年8月に至る間の94件の集団発生中稍々詳細に報告されたもの60件についてみるに,水系感染と推定されるもの16件(その他疑あるもの10件)食餌性感染と推定されるもの3件(その他疑あるもの4件)であるという。水系感染が考慮されるようになつたのは昭和22年11月藤沢市江の島に5つの小中学校生が遠足して,うち3校に泉熱の集団発生をみた例についての児玉,水野等の報告以降のことであると思われる。上記の16件についてみるに水源は井戸が最も多く,次で泉,簡易水道の順である。水による感染の興味ある例としては昭和25年5月大阪府泉北郡北松尾村小学校の生徒が遠足先で泉の水を水筒に汲んで持ち帰り,妹が自宅で飲んで姉妹共に発病したと云う報告がある。
 然るに泉熱の文献をみるに未だ人体実験における感染発症陽性の報告例がない。私共も昭和24年11月藤沢市川名の集団発生に於て,第2病日の患者血液を有志5名(当衞研所員及び同家族15〜20才)に各0.5cc筋肉内接種したが,1名に於て翌日軽度の下痢をみた外全く反応を示さなかつた。

井水飮用による泉熱人体感染実験

著者: 長岐佐武郞 ,   阿部実 ,   丹治汪 ,   南沢康雄 ,   北岡正見 ,   前田道明

ページ範囲:P.79 - P.81

 泉熱の過去における集団発生について,その感染源を追及すると,経口感染特に水系感染(井戸水或は泉の水など)を推定せざるを得ない場合が屡々ある。この点について著者の一人前田1)は一昨年の学会の席上に於て追加し強調した。その後昭和25年5月大阪府泉北郡北松尾村の小学校に於て,遠足が誘因となり学童間に集団的に爆発的に発生した際,一学童が水筒に入れて持ち帰つた遠足先の水を,未就学の妹が自宅に於て飲み兄妹共に発病した2・3・4)。この事実は,泉熱とは飲料水によつて経口的に感染発病することがあり得ることを裏書きするものである。しかし,そこには,厳密な意味において,客観的証左が尚欠けている。そこで感染源と思われる井戸水或は泉水から直接病原体を分離することが先決問題となつた。
 たまたま昭和26年6月神奈川県高座郡御所見村において泉熱の集団発生が起り,児玉等と共に現地を調査したところ水系感染が疑われた。そこで感染源と推定されたW氏家屋内の共同井戸の水を6月4日に汲み取り持ち帰り,その一部をマウスに接種すると共に大部分の水を無処置の儘,その100〜200ccを夫々職員関係者6名(19才の1名を除き他は小児)に飲用せしめた。その結果,水を飲んだものの中に2名に感染発症が認められた。因みに之等被検者は他からの泉熱感染から遮断されていたものであることを附記する。

赤痢患者,同附添人及び家族の赤痢菌検査索

著者: 織家実 ,   伊地知隆 ,   江崎孫平 ,   落合国太郞 ,   沢田收 ,   内藤晶之助

ページ範囲:P.81 - P.86

1.緒言
 近年わが国における赤痢は終戦直後殊に昭和23年度において著しく減少し,一時はこのまま赤痢がわが国からなくなるのではないかとさえ思われたほどである。しかるに昭和24年から,赤痢が再び猛烈な勢で増加し,赤痢の予防は現下日本における保健対策上重要課題の一つである。これに鑑み,昭和28年9月1日から,厚生省主催のもとに赤痢の実態調査なる行事が全国的に展開され,各行政庁,研究所,保健所,伝染病院等挙げて赤痢の疫学基礎,臨牀に亘つて大掛りな調査研究が行われつつある。
 赤痢は人に限られた伝染病で,病原菌の侵入門戸は専ら口腔であり,その排泄路も亦糞便中に限られている。従つて赤痢の伝染経路は肛門→口であり,至つてわかりきつたものである。しかるにその間に介在する条件は極めて多種多様である。

河川の衞生について—(木曾川水質調査報告)

著者: 鯉沼茆吾 ,   錦織宣寿 ,   出原汜 ,   入谷辰男 ,   原田昭 ,   稻垣芳久 ,   藤井治朗 ,   伊藤公子

ページ範囲:P.86 - P.89

 河川は土地の動脈であると共に静脈ともなるものであるから,流れに従つて汚染することのあるのは当然であるが,之を日常生活に利用する立場よりすれば,河川の清淨は大きな関心事であり,殊に都市の上水道として之を利用する場合には,その水質の良否は市民保健上重大視すべきもので,源水河川の衛生確保は都市衛生の一貫として不断の注意を払わなければならないものであろう。
 百万以上の人口を養う名古屋市上水道の源水は木曾川下流の水である。最近この源水取入口附近に工場を建設する計画があり,その可否について論議されているが,木曾川は全長232粁の大河で流域には若干の小都市があり,その内の一市には大規模の工場もあるので現状がいかなるものであるかを知ることは河川衛生対策上興味あることである。そこで私共は木曾川の水質調査を企て昭和28年7月16日一斉調査を実施した。幸に調査の翌日より大雨となつたが,この日までは晴天が続き当日午後一時小雨をみた程度であつたから,本調査は木曾川の夏の常態を捉ええたものとなしうる。

日常食品の食品衞生學的研究—第6報 日常食品の汚染指標としてのEnterococcusの意義

著者: 柳沢文德 ,   那須昭夫 ,   村磯旺嗣 ,   山崎義人

ページ範囲:P.89 - P.91

 最近河川,プールの水及び飲料水,或は食品を対象として腸球菌の問題が大分とりあげられる様になつて来た。欧米に於ては先ずMallmann,GelpiがLactose-brothを使用してSedimentを検鏡すると云う方法を提唱したが,その後HartmannがSodium azidの抗菌像をしらべ,非常にG陰性菌を抑えると云う事を報告したので,1940年Mallmannはこれを液体培地に応用し腸球菌の検査に使用した。Sod. azidが使用され始めてから,腸球菌に対して各種液体培養基の研究が進められ,1943年Hajana,PerryはStreptococcus faecalisのSelective media(S-F medium),45.0℃の培養を提唱した。更に1948年RotheはMallmann,Hajana及びPerryにならいAzid培地の確立を提唱した。此の培地はStandard Iactose brothにSod. Azidを加えたものであつたが,更にRothはAzid-dextrose-Brothを考案,45℃の発育,PH 9.6の発育,6.5% Naclの抵抗性,0.1%のMethylenblau抵抗性等を腸球菌及び各種菌株に対して実験して居る。

産兒制限で刻下の人口問題は解決出來る

著者: 田中正四

ページ範囲:P.91 - P.93

1.まえがき
 一家言を有する人は口を開けば日本人口の驚くべき増加の傾向について云々する。ラジオでは街頭録音その他で,いろいろの角度からこの問題をとりあげて世人の関心をひいている。5種類位の新聞を丹念によむと一日として人口問題に関する記事.又は論説,解説の載つていない日はない.
 しかし人口問題はその重要性が今日に始つたのではない。人口問題は常に新しい課題として,いつの時代にも登場するものなのである。ベーベルはその著"婦人論"の中で"人口過剰の恐怖は極めて古いものである。それはギリシヤ人やローマ人の間にも,また中世の初めにも存在した。プラトンもアリストテレスも,ローマ人も,中世の小市民も亦この恐怖に囚えられた"と云つている。

大日本紡績會社大垣化學工場の集団赤痢

著者: 臼井治郞

ページ範囲:P.93 - P.96

1.はしがき
 昭和27年8月下旬より同年12月までの期間に大日本紡績大垣化学工場並びに隣接する社宅において赤痢が集団的に発生したので其の疫学的概況を報告する。
 本工場は大垣市の西部に位し「スフ」の製造を行つており,従業員1137名中520名は寄宿舎,432名は自宅185名は社宅に居住していた。なお社宅には従業員の家族634名が生活していた。

吾々の所謂環境判定標示法について

著者: 小机弘之 ,   山崎和秀

ページ範囲:P.96 - P.99

1.緒言
 環境衛生学の重要な部門として空気の物理的.化学的性状の検討は古くから行われているが,特に戦後労働基準法の施行に伴い,各種事業場に於ける衛生管理は不可欠のものとなり,作業環境の調査が活溌に行われ,種々の新知見が得られつつある。
 吾々は数年来,主として事務室の作業環境を対象として種々調査研究を行つて来たが,その成績を判定する場合に,測定値の一覧表や測定項目個々のグラフを用いて検討したのでは極めて煩雑で不便を感ずることが多い。

血清アルカリ性フォスファターゼ値より見た北海道の佝僂病について

著者: 北見征男

ページ範囲:P.99 - P.102

1.緒言
血清アルカリ性フオスフアターゼ値が佝瘻病に於て高い価を示すことは,Bodansky(1),Morris(2),等により早くより注意されて居つたが,測定法が複雑であつた為一般に行なわれず,又特異性を欠いている事などもあつて診断手技としては価値少しとされて来た。然るに測定法が種々改良されて,少量の血清により簡単に測定する方法が行われるようになつて,(3)(4)(5)再び血清アルカリ性フオスフアターゼ値(以下Al.Ph.V.と略す)の測定が佝僂病の有力な補助診断法として用いられるようになつて来た。(6)(7)(8)(9)(10)(11)(12)(13)
 満2才以下の健康な乳幼児は性の差なく5〜15ボダンスキー単位(以下B.U.と略す)であると云われて居り,(10)(13)(14)活動性佝僂病,嚢胞性繊維骨炎,畸形骨炎,その他の骨疾患,肝疾患によりAl.Ph.V.の異常な上昇がある。(11)(13)(14)乳幼児に於てAl.Ph.V.を測定し,異常に高い価を示した場合最も多いのは佝僂病であろう。Bicknell(9)の云うように,Al.Ph.V.上昇のみを以て佝僂病と診断するのは早計であると考えられるが,乳幼児に於てAl.Ph.V.上昇ある場合,全身骨疾患,肝疾患を考えるよりも先ず佝僂病を考慮せねばならない。

日本腦炎後遺症に関する2,3の觀察

著者: 山口與四郞 ,   池田和雄 ,   岩崎綾予

ページ範囲:P.102 - P.105

I.緒言
 日本脳炎の後遺症に関しては数多くの文献があるが我々は昭和23年及び昭和25年に都内に発生した本症患者中329名の後遺症患者について,その疫学的観察を行うと共に,昭和23年の後遺症患者について昭和26年9月現在の治癒状況を調査して2-3の新知見を得たので茲にその成績を報告する。尚我々が取扱つた後遺症患者と云うのは発病後1カ月以上を経て尚何等かの症状を遺したものを云う。

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昭和28年の公衆衞生への回顧

著者: 渡辺定

ページ範囲:P.61 - P.66

Ⅰはしがき
 本誌編集部人より表題の執筆を依頼されたが私にはむずかしい問題であるので辞退したがたつてとのことで筆をとつた。そしてその問題は行政的方面は主として厚生省の公衆衛生局の行政範囲に限つて,山口局長,楠本部長,各課長を歴訪して示教を乞いこれに多少私見を加えた。茲に各位に深謝申上げる。多忙中短時間に纏めたものでづさんの点は御宥免を乞う次第である。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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