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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生15巻4号

1954年04月発行

雑誌目次

特集 乳幼兒衞生の焦点(Ⅱ)

百日咳母子免疫

著者: 岡田博

ページ範囲:P.1 - P.6

Ⅰ.まえがき
 百日咳は我国並びに欧米各国に於ても以前より乳幼兒急性伝染病中罹患率死亡率に於て最も高い疾患であつた。そして近年には大多数の伝染病と同様その罹患率死亡率共に減少を示してきているのは第1表の如くであるが,それにしてもなおかつ乳幼兒伝染病中最も死亡率の高いものであつて殊に乳兒死亡率に於ては依然顕著な高率を示し昭和2 年に人口10万対6.9を示しているのである。
 此の理由は申す迄もなく多くの伝染病に対して新生兒は生後半カ年は自然免疫を有するに拘らず此疾患には天然痘と同様に出生直後でも感受性があり,しかも出生後の罹患時期が早ければ早い程免疫機構が整備されていない為に致命率が高くなるのであつて事実50%以上が生後6カ月以内に死亡しているのである①。なおかつ感染発症指数が小山②も御蔵島の流行より指摘している如く麻疹天然痘と同様95%に近い高率にあることも一因と考えられる。

肢体不自由兒対策の現況と將來

著者: 小池文英

ページ範囲:P.7 - P.10

はしがき
 吾国の肢体不自由兒事業は終戦後兒童福祉法によつてはじめて行政的に探りあげられ,施行以来未だ日が浅いのであるが,この2〜3年の間に或る程度の体系が整い,もう一息で行政的な基礎が固まろうとする段階にあるかと思われる。

乳幼兒榮養の最新知識

著者: 宮崎叶

ページ範囲:P.11 - P.15

まえがき
 編集室からのテーマのままに表題を乳幼兒栄養の最新知識としたが,流動する先端の学説ばかりをそのまま紹介したのでは,公衆衞生に早急に役立とうとは考えられないから多少古くても確実なものも一所に扱つて行きたいと思う。

保健所に於ける乳幼兒保健指導の重点

著者: 宇留野勝正

ページ範囲:P.16 - P.18

 保健所に於ける乳幼兒保健指導の主眼は第一に保健婦の家庭訪問による指導と時を決めて管内全乳幼兒一齊に行われる集団的健診とその後の指導におかるべきと思う。日常の外来に於ける健相及び指導は必ずしも保健所特有のものではなく,病院や専門医師を訪れる健相と本質的に何等変るところはない筈であるからである。日本の親の衞生知識,育兒知識が進み凡ての親が自ら進んでその子供を健診施設に時々伴うようになれば保健所の筆者等も余計な労力を使う事もなく多くの乳幼兒の保健指導を行い得るかもしれないが,現在の日本の状態では自ら進んで医師を呼び或は施設を訪れるものは非常に少ないので止むなく押し売り的に保健婦は家庭を訪問し,年に1〜2回管内の乳幼兒を集めて健診を行う必要があるのであつて現在のところこの2つが筆者等の仕事の最も意義のある部分を占めているといつてもよいのである。次に以上を主とし筆者が常日頃考えている事を述べてみたい。

学校保健の現状

著者: 新井英夫

ページ範囲:P.20 - P.22

 個人個人が日常を健康に過すことが出来,又個人個人は自己の健康がその地域社会の人々の健康に善いにつけ,悪いにつけ影響を持つものであることをよく認識して良い行動をする。更には自己の健康の良否か又次代の子供達に大きな影響を持つものであることをしつて生活する。こうなつてきた時ここにはじめて私達の好ましい幸福な社会生活の基礎がつくりあげられるはずである。由来この社会的必要性をはたすために学校教育に於て学徒の養護と,衛生に対する知識,習慣,態度の育成の任にある学校衛生は60有余年の歴史のあゆみをもつてきている。特に健康教育(保健教育)は学校教育の必修科目である体育科の内の重要な教材として取りあげられ,体育が「運動と衛生」の二教材に取扱われ,一つは健康教育の積極面として,一つは健康,発育の知識や技能の基盤の培養として,両々相まつて,心身ともに健康な学徒の育成と云う教育目的達成の車の両輪をなしていたのである。

研究報告

勞働環環調査の方法について—研究者の立場から

著者: 額田粲 ,   小泉明 ,   脇坂一郞

ページ範囲:P.28 - P.31

1.環境調査の目標について
 労働環境の調査は我々研究者の純学問的興味からなされる場合もあるが,多くの場合事業所側の依頼に基ずいてなされる。このような依頼の背景には調査の結果を何等かの形で利用しようとする事業所側の目的が存在するわけであるが,それには大別して二つの場合があるように思われる。その一つは衛生管理の一環としてその調査を行い,それによつて労働環境を改善しようとする意図のある場合で,第二の場合は調査の結果労働環境を格付し,環境加給を合理化しようとする場合である。
 第一の目的の調査は産業が進めば進むだけ,その需要も増加し,欧米ではそのためにIndustrial hygienistと云う新しい職業の分野も出来ている現状である。我国に於てはそのような時期には未だ到達していないため,大学その他の医学及び公衆衛生の研究機関に止むを得ず依頼が集中している状態になつている。第二の目的を有する依頼も亦衛生学の本来の目標とするものとは云い得ないものであるが,このような自己の生活に直接関係のある問題に対しては労資双方共に著しい熱意を有するように見受けられる。何らかの形で人体に影響を及ぼす異常環境を格付しそれを賃金に反映させると云う考え方にはその根本に於いて大きな誤謬の潜んでいるものであるが,環境改善に対しては研究者としても出来得る限りの援助を与えその促進をはからなければならない。

ポーラログラフイーの衛生化学への試み(第2報)—市販清涼飲料水中の銅含有量について

著者: 松本和夫 ,   下川洪平 ,   柴山正彦

ページ範囲:P.31 - P.33

まえがき
 昭和28年3月,本県に於て清涼飲料水に起因すると思考される食中毒が発生した。患者は2, 3, 5及び9才の小児4名で,何れも推定原因食品たるミカン水約150c.c.を摂取後30分にして嘔吐を起した。摂取後嘔吐迄の時間が短い点から化学的食中毒の疑が濃くなり,残品がなかつたので同一店舗内の同一Lotと思われる製品について検査した処,67.5P.P.M.の銅を検出した。
 そこで之に関連して市販されて居る清涼飲料水79種類を收去し銅含有量を測定し,併せて清涼飲料水の銅汚染の原因追求についての基礎的実験を行い,銅含有許容量竝製造工程の改良に関する知見を得たので報告する。

一保菌者から検出された運動性を欠した腸チスス菌の性状に就いて

著者: 松井淸治 ,   今園義盛 ,   小林文治 ,   杉山大是一

ページ範囲:P.33 - P.36

緒言
運動性を欠くSalmonella菌株所謂"non-motilevariants"に就いては,s. aberdeenにおいてKauffmann(1939)1)が,S. newportにおいてはHinschow2)が,S. SandiagoにおいてEdwards3)(1946)等が,S. paraBでHirsch(1947),S. TyphimurriumでFranees(5
 (5(1952)の報告がある。而して上述の諸菌株は何れも運動を欠くが,鞭毛染色により運動性のある同種菌株と同数の鞭毛を認め又それ等の菌株で生菌免疫血清を作ると鞭毛抗体の出現を証明している。広木等6はS. newingtonに於て同様の現象を観察し発育不全型と記載している。Bahatatnagar(1935)(7等は腸チフス菌保菌者から運動性を欠きvi血清とのみ凝集する菌株を分離して之を "vivariant" として報告している。吾々は昨年6年月市立川崎病院入院の赤痢患者(死亡:sh・flexneri 2aを分離す)家族の検便中たまたまその一員から運動を欠く腸チフス菌を分離した。本人は35年前に腸チフスに罹患したがその後は著患を知らず,今回保菌者として入院中も症状無く経過したが,便からは常に上記の如き菌が検出され又3回採取したA-胆汁,B-胆汁の培養からも毎度菌の検出を見た。吾々は分離菌山本株の性状に就いて保存菌株と比較した成績に就て報告したい。

強化白米の給與試驗及び澤田氏尿反応の消長

著者: 廣部智夫

ページ範囲:P.36 - P.39

 集団給食の場合,その栄養給与の適否が勤労者の健康状態に重大な関係がある事は従来考えられ,殊に夏季に於てはその疲労対策としてビタミンB1補給を主とし,而も此の場合錠剤の形で使用せられるも,私はビタミンB1を白米に強化した所謂強化白米(ビタライス)を食中事に混合して与えた場合,一般健康状態から欠勤率に如何なる影響があるか,又此の場合尿の沢田反応が季節により如何に左右されるかを観察せんとして,昭和27年6月24日より同年10月末日迄帝国産業株式会社佐野工場で強化白米の給与試験を行つたので其の成績を報告する。

農村に於ける屎尿処理施設とその効果に就て

著者: 川本勉

ページ範囲:P.39 - P.43

緒言
 戦後寄生虫卵の保有率は,都市たると農村たると問わず漫延増加の傾向にあり,その人体に及ぼす影響は図り知られざるものがある。従来寄生虫に対しては予防対策上の理論は相当進歩して来たが,独りその実施面に於て遙に立遅れの感があり,特に我々衛生行政に携わる者にとつて奮起一番何んとか打開しなければならない事を痛感する。著者は当管内に於て早くから当所外来患者に余りにも多く鈎虫の保有者がある事実に注目し,昭和22年来より管内農民を対象に調査を実施して来たが,此処に驚くべき事実を見出した。即ち,当管内を縦貫する最大河川たる養老川の下岸流域地帯がその鈎虫保有率70%前後,蛔虫保有率10%内外で,鈎虫の感染幼虫の成育に最も適しておると言う事である。何故多いのか之の対策を如何にすべきかと言う事はその人体に及ぼす影響から見ても当地方にとつて最大問題たるを失わない。そこで著者は之の問題を千葉県知事並に千葉県寄生虫対策委員会に提案したところ,県に於ては之の問題に対する措置を県全体の寄生虫予防対策上の一事業として認め,当地方を鈎虫浸淫地区に指定しこの為屎尿処理施設に対する多額の補助金を獲得した。

農村乳兒の衞生—特に社会的階層間の状況について

著者: 國見辰雄

ページ範囲:P.43 - P.46

 関東地方北部の一純農村を対象として,農民の生活環境と衞生状態とを対比して,調査したものの中から特に興味あると思われる。乳児の出生から死に至る迄の経過を報告する。
 生活環境を生産生活の環境と消費生活のそれに区分する。前者は労働条件であり,後者は文化水準の問題である。農民の場合,農業労働の条件と衞生の問題は主として労働科学として取扱われ,文化水準は又種々な指標を用いて明らかにされて居る。私は栃木県河内郡絹島村の全人口約5000を社会科学的方法に基いて,必然的にその対象人の農業労働の条件に,質量共に差異を示す階級を区分した。即ち,1)2)3)4)

農繁期の乳兒保育状況についての觀察

著者: 藤井佐司

ページ範囲:P.47 - P.48

 農繁期に於ける乳児の保育については農村の小児衛生の立場から大いに考えねばならぬ。此は下痢及腸炎死亡が春の農繁期(6〜8月)及秋の農繁期(11〜12月)に二つの山がある事がらもうなずけられる事である。著者は昭和28年10月下旬より11月下旬に群馬県高崎保健所管内の農村に於いて乳児の保育状況を訪問調査したのでその成績を報告致する。

O.M.K.法集団検診成績

著者: 吉川貞衞 ,   櫻井実 ,   梅谷勇一 ,   新井俊之 ,   森田保次郞

ページ範囲:P.48 - P.49

Ⅰ緒言
 1948年Middlebrook,Dubos両氏が考案した感作赤血球凝集反応を応用して1951年,国立千葉療養所の岡田,馬杉,小林氏等は尿中ツベルクリンの検出並びに定量に成功しO. M. K法と称し,盛に動物実験及び臨床成績を報告している。従来の血清学的方法が抗体の証明を目的としていたのに反しO. M. K. 法は之と異つて抗原検出法であるという意味で,全く新らしいものと考える。
 臨床上の応用は頗る広範囲であるが,岡田氏は次の諸項目をあげている。

漁村の生活実態調査

著者: 牧野四郞 ,   中牟田重昌

ページ範囲:P.50 - P.53

Ⅰ結言
 現在の社会生活を見わたしてみて,最も非衛生的な生活を営んでいるものは,漁村の生活ではあるまいか。殊に福岡県下,有明海に面する漁村は,主として貝類(あさり貝,あか貝,まこ貝等)の採集を行つて生計を営んでおり,他の漁業が盛んになるにつれて,益々反比例的にさびれて行く傾向にある。経済状態が極めて悪く,生計が逼迫している漁村であつてみれば,当然非衛生的,非健康的なものであろう。吾々は,これら悪条件下にある管内漁村の生活状態を人口,生活環境,栄養問題等の見地より調査した次第である。

インフルエンザ・ワクチンに関する研究—現行イ・ワクチンを用いての動物実験成績

著者: 芦原義守 ,   甲野禮作 ,   笠原晃 ,   鈴木実

ページ範囲:P.53 - P.55

まえがき
 インフルエンザ・ワクチン(以下イ・ワクチン)の研究はFrancis, T及びSalk, J. E. ①②を中心に広範なワクチン接種実験が米国に於て実施されて実地予防効果を確認されたが,我国でも数年来ワクチンの製造と実用化に努力し昨昭和27年には厚生省よりイ・研究委員会を通じて提供されたイ・ワクチンを全国各地に於て実施され丁度イ・A-Primeの流行に遭遇して得た予防効果はある程度の効果を期待出来るが決して満足なものではなかつた。③我々は野外接種実験④⑤と平行して現行イ・ワクチンに就て考察を試みるために実験動物を使用して感染防禦効果.血液像の変化及び免疫抗体の獲得の状態に就て追及したが本実験からのみで決定的な事は云えないが2,3の成績を得たのでその大要を記述する。

統計の頁

昭和27年疾病異常該当者率

ページ範囲:P.26 - P.27

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結核実態調査について

著者: 高部益男

ページ範囲:P.23 - P.25

 去る3月13日厚生省から昭和28年度事業として行われた結核実態調査の成績の概要の発表があつた。なお,その学術的な検討は4月1日日本結核病学会の特別講演として発表せられることになつているが,尨大な資料であるため,一応の解析の結果のみであつて,細部に亘る3次,4次的な疫学的分析はさらに時日を要するものと思われる。
 今回の厚生省発表成績は,重点事項に限られていてその主な点は次の通りである。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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