icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生15巻5号

1954年05月発行

雑誌目次

--------------------

インフルエンザの疫学

著者: 館林宣夫

ページ範囲:P.1 - P.9

前説
 インフルエンザを全国的に論ずる場合,基礎資料となるものは死者であるので,流行の規模は死者数から見たものであり,罹患率は高いが致命率の低いものはそのままの姿として捕促することがむずかしい。

日本の家住性鼠の最近の分類

著者: 中島文夫

ページ範囲:P.29 - P.31

緒言
 保健文化賞の受賞者をみても判るように吾が国に於ても蚊や蠅の居ない町村が所々に現われて来た。それは小林(1)が述べられている様に優秀な殺虫剤の出現と,当局の非常な努力及び此等動物の分類,生態等が研究者によつて基礎的に明らかにされて来たことによるものである。
 此れから第1の衞生動物の問題に鼡があげられるが,之についても前述同様の3つの条件が満足されなければ効果を期待することが出来ない。

座談会

実態調査のおしえるもの

著者: 北錬平 ,   金井進 ,   聖成稔 ,   重松逸造 ,   佐藤德郎 ,   豊川行平 ,   石垣純二

ページ範囲:P.10 - P.28

いとぐち
 石垣 昨年の7月から10月にわたりまして厚生省が全国の211地区で5万人を対象にして調べました実態調査につきまして聖成課長から最初にその調査結果のエツセンスをお伺いして,それに基いてお話を進めていただこうと思います。
 聖成 何といつても従来結核患者の数というものは死亡者数の10倍乃至4倍として想定する。そして160万ということをいつておりましたね。それ以外には方法がなかつたわけです。それが今度の調査の結果かなり実際に近い数字の292万となつています。それから要注意者が261万ということが判つきりした。これが第一の問題です。その次には従来15才から29才の間の靑少年に結核が多い,それから死亡率もこの辺が一番多い。それから最近は―実態調査の結果じやありませんが30才から49才の間に死亡率が一番多いということが分つたわけですが,今度の実態調査でも30才から49才の間が患者が一番多いということになつて,死亡も患者もともに30才から49才のところに多くなつたという。これは非常に注目すべきことだと思うんです。それから更に化学療法を必要とするもの219万,外科療法を必要とするもの27万,人工気胸気腹を必要とするもの17万,その他48万という適応状態も明らかになつてきた。また入院を必要とするものが,これは純医学的判定ですが137万あるということが明確になつてきたということが一番大きな点じやないかと私も考えているわけです。

研究報告

蛔虫感染媒介者としての蔬菜に関する実態調査

著者: 小宮義孝 ,   小島邦子

ページ範囲:P.37 - P.40

 蔬菜が蛔虫感染媒介者として重要な意義を有することを考慮して,主としてその関東地方における出廻り状況生食状況の実体調査を行った。その結果は次の如くであった。
1)ふつうに出廻つている野菜のうち,普通生食に供せられているものは22種,時に生食するもの10種.全く生食されないものは13種で,総数の半数以上が普通生食に供せられている。
2)生食に供するものの調理法は,各種つけもの,つけ合せ,塩もみ,酢のもの,和えものなどが多く乳頻繁に生食する蔬菜ほどその調理法も多い。
3)蔬菜種の出廻り状況は春秋が最も多いが,蛔虫感染媒介者としての意義が比較的大きいと考えられる大根にんじん,ねぎ,玉ねぎなどは四季を通じて出廻つており,白菜,つまみ菜などは主として秋に出廻つている。

名古屋地方における腸管寄生原虫の検索成績—特に赤痢アメーバ嚢子保有者について

著者: 戸谷徹造 ,   長谷川艶子 ,   水野康子 ,   田中百合子 ,   佐々木陽子

ページ範囲:P.40 - P.43

I.緒言
 わが国における腸管寄生原虫の分布については,櫔原(1926)が中野電信隊兵士及び埼玉県農民につき報告したのを始めとし高橋等(熊本),松永等(京都)の調査があるが赤痢アメーバ(Entamoeba hystoelytica)を最初に検出したのは田辺等(1932)で,氏等は兵庫及び広島出身の兵士にっき6.7%に赤痢アメーバを認めている。その後第2次世界大戦以前においては平山(福岡),松岡(東京),門馬・松田(大阪),松田(広島),松林・木下(東京)等により0.56%乃至6.7%に検出されている。しかるに大戦後世界各地より引揚者,復員者があり外地において顕著な赤痢症状を呈したConvalescentcarrierやContact carrierが持込んだ外地株により赤痢症状を呈するアメーバ赤痢患者が増加の傾向にある。このことについては安東・山岸は1949年東京都及び附近の赤痢症状を呈したアメーバ赤痢患者で,栄養型を検出した53名について外地感染者26例49.0%,内地感染者27例51.0%があったと述べている。又斎藤・高橋(1948)は59例のCyst排泄者につき外地に滞在したことのあるもの23例,内地のみのもの36例で内地感染Cyst排泄者が多いと述べている。

松阪管内における受胎調節實施状況(第2報)

著者: 掃部俊造

ページ範囲:P.43 - P.45

緒言
 第1報にて,管内6カ町村の受胎調節実施状況を調査し,且つ理論的実行率曲線なるものを提唱したのであるが,第2報では,第1報にて報告し得なかつた事実について特に報告したいと考える。

日常食品の食品衞生学的研究—第5報 蛸・烏賊・えびの汚染度に就て

著者: 那須昭夫

ページ範囲:P.45 - P.46

 最近食中毒事件として,新聞紙上を賑わしているものの中に,鮨,酢蛸,烏賊の刺身等が原因となつているものが,相当数ある様に見受けられる。そこで著者は蛸・烏賊・えびに就て,汚染度が最も高く,而も中毒発生例の多い夏期を中心として7・8・9・10の4カ月に亘り汚染状況を検討した。
 即ちこれらの魚介類に関する検査方法の検討,最近食中毒菌として問題になってきた変型菌の分布問題,生菌数測定の際培養温度に依る差異,或は菌の性状等について実験を行い,更に之等食品の清淨法に就ても,目下検討中なので,後日報告するが,今般は夏期に於ける,汚染状況の調査成績の概略を報告する。

下痢腸炎及び腸潰瘍死亡率の地域別季節変動

著者: 入鹿山勝郞 ,   大浦辰男 ,   寺岡恒夫

ページ範囲:P.46 - P.52


 本邦の下痢腸炎及び腸潰瘍による死亡率は,1900年より1923年頃までは漸増の傾向にあつたが,その後今日まで漸減している。その中戦後1947〜1950年の4カ年の本病の死亡率をみるに,2才未満のものは各々人口10万にっき70.7,60.9,50.9及び35.3を示し2才以上のものは各々59.3,43.8,36.9及び41.2を示している。余等は以上4カ年の本病の死亡率を地域別に,且月別に集計し,これより季節指数を求め,その変動を観察した。尚厚生省の集計では1)1951年以降本病名は胃腸炎腸炎及び大腸炎に分類され,2才未満の場合はこれから新生児下痢を除外してある。

ルポルタージユ

新潟縣衞生研究所

ページ範囲:P.35 - P.36

 信濃川が悠々と日本海に注ぐ所に東西新潟を結ぶ2つの大きな橋がある,1つを万代橋,1つは昭和橋と云う。この昭和橋のたもと信濃川畔に新潟県衛生研究所がある。探訪記者の任をおびて研究所の門をくぐる時は,北陸の空は既に鉛色,信濃川は妙にさざなみがたっていた。
 受付嬢の案内で階上の所長室に通される。篠川所長は検査室に行かれ,しばし御猶予をとの由,無人の部屋で屡々行われる大抵の人の仕草に習い,失礼とは思い乍ら部屋をゆつくり観賞させて戴く。正面の壁の2つの表彰状に先ず眼が止る,新潟県下の発疹熱に関ずるものと,昭和28年度の保健文化賞のそれである。書棚には昭和28年以来の研究報告60余編が夫々のボツクスに收められぎつしりと並んでいる。2つの表彰状と数多くの研究報告から推して,篠川所長以下職員諸氏の活躍ぶりが想像され,これから観る検査室の実際の活躍状況に 唯ならざる期待感が溢れて来る。程なく長身の篠川所長がやつて来て探訪子の意とする所を既に解され,早速案内に及んで戴く。

隨筆

ヂフテリアに挑んだ人達—エールリツヒとベーリングの生誕百年に当つて

著者: 高橋功

ページ範囲:P.32 - P.34

 1882年結核菌を発見したローベルト・コッホは更にその翌年コレラ菌を発見し,細菌学の大御所的存在となり,ベルリンのシューマン街のコッホ研究所には,ドイツ国内は勿論のこと国外からも若い研究家達が集まり,そこはまるで医学徒の聖地メッカの感を呈していた。フリードリツヒ・レフラーもその傘下に集つた1人であつた。
 レフラーは1852年に生れ,1874年にウュルッブルク大学を卒業した。卒業論文は「ヂフテリアの流行に就いて」という題であつた、軍医になるつもりだつたが,コッホに認められて思い止つて衞生技師となり,次いでコッホの研究所に入つた当時ベルリンに於てさえヂフテリアの死亡率は50パーセントを越えてい,子を持つ親達の恐怖の的であつた。1883年にスイスの医師エドウイン・クレブスが,ヂフテリアで死んだ子の咽頭粘膜から見なれない菌を発見した。しかしこれをヂフテリア菌であることは証明しなかつたが,翌年レフラーが動物実験によつてその正体をつきとめた。こうしてヂフテリア菌は1884年に発見され,兩者の名誉を重んじて一名レフラー・クレブス菌とも呼ばれることになつた。ただ,この際レフラーは,ヂフテリア菌は罹患粘膜に必ず発見されるが,この局所症状よりも寧ろ心筋麻痺が直接死因であることに注目し,その点を記載しながら,これ以上を追求しなかつた。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら