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特集 公衆衞生に必要な新藥の知識
輸血代用品
著者: 大村泰男1
所属機関: 1東京大学
ページ範囲:P.27 - P.32
文献購入ページに移動輸血代用品なる題目で執筆を依頼されたがこの言葉は輸液を研究している者にとつては,好ましい響を与えない。一般に代用品と称せられる物は本物よりとにかく落ちるものと,相場がきまつている。現在のわれわれの努力は,輸液をして輸血代用品の名を返上させる線まで向上せしめることである。
とは言え,輸血,すなわち全血輸注は,今更ながらその臨牀効果の多面的なことに驚くのである。これを今日の輸血代用液が全て果し得ているとは,とても言えない。僅かにある一面を代用しているに過ぎない。それでは同液に欠けている点は何か。いろいろ思いつくのであるが,最たるものは酸素呼吸に関与するヘモグロビンを欠くことである。Hbはまだ人工的に造り得ないから,Hbを輸液の一成分として用い得るまでに到つていない。現在は後に述べるように輸液の研究が進歩したので,その他の点では,例えば給水効果,取扱いの便利,運搬及び保存性のあること,副作用の少いことなどでは,輸液の方に秀れた分があるけれども,危急の場合にはまだまだ輸血にかなわないから,輸血代用品なる言葉は,いまだ返上の時期に達していない。今後の発展を期待するのである。
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