icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生16巻1号

1954年07月発行

雑誌目次

特集 赤痢(Ⅰ)

—昭和28年度に実施せる—赤痢実態調査成績

著者: 厚生省

ページ範囲:P.6 - P.38

序言
 近年我国における赤痢流行が,益々その烈しさを加えつつある現状に鑑み厚生省は昭和28年度において,本病予防対策の資とするため,赤痢流行について,その正確なまん延度,発生並に流行の要因等について全国的調査を実施した。
 本調査の実施に当つては,厚生省に赤痢実態調査協議会を設置し,全国都道府県及び政令市の協力を得て,昭和28年9月から昭和29年3月までの期間,下記調査事項について調査を行つた。

フレキスナー先生のプロフイル

著者: 大平得三

ページ範囲:P.62 - P.62

 フレスキナー先生が日本の勲章をもらつて御機嫌がいいから,或は両君の入所を許すかも知れないというわけで,野口先生に紹介して頂いて,故山川章太郎君と二人でフ先生に会つた。処はロツクフエラー医学研究所の所長室であった。
 フ先生は瘠せぎす長身の引きしまつた顔貌の人だったが,眼が鋭かつた。吾々2人に云つたことは次のようであつた。

志賀先生を語る

著者: 高野六郞

ページ範囲:P.64 - P.64

 志賀先生の東京大学を出たのは明治29年で,すぐ北里博士の伝染病研究所へ入つた。明治30年の春の講習会で細菌学の手ほどきをうけ,さてこれから研究作業にとりかかろうという所に赤痢が流行して来た。よつて北里所長が赤痢病原検索を志賀助手に命じた。
 前年Widal反応が報告され,それが腸チフスで診断上価値のあることが明かとなつていた。志賀助手はこの新技術を赤痢の研究に活用した。志賀助手が患者の粘液血便から分離培養した疑わしい細菌と患者血清とを合せて凝集反応を試み,陽性の菌種を択んで病原菌の狙いを確めることができたのは,賢明でもあり,好運でもあつた。

論説

赤痢の予防

著者: 小島三郞

ページ範囲:P.1 - P.5

前書き
 この題目で,或はこれに関係ある題目で,私は何度書いたことか,又は書かされたことか。純正学術的専門的に1)9,法規註釈的に,衛生行政官向きに2)3),細菌技術者向きに,そして一般的に4)5),地方的に通俗的季節的に6)7)8),はたまた飲食業者向きに9)或は環境衛生学的に,そして今また筆をとらされる。恐らく私のこの種類の執筆は,食物中毒やインフルエンザやの運命と共に当分は続くだろう。聖僧の勤行の如く繰り返えされるだろう。勤行は毎朝であり,私の方は年数回以上にはならない。がそのエネルギイ消耗度と赤痢予防への熱情度は,聖僧の毎朝の勤行より遙かに高いだろう。読む人が破戒坊主の三文説教と比較しても致し方がない。

赤痢の細菌学

著者: 安齊博

ページ範囲:P.39 - P.47

1.赤痢菌の定義
 明治29年志賀潔先生1)が赤痢患者より一細菌を分離し,赤痢原因菌として決定し,明治31年Zentralblattに発表した。次いで2年後Flexnerがフイリツピンで志賀菌と異なる病原菌を発見され,又明治36年には二木謙三先生が所謂駒込菌を報告した。それまでは,一病気一病原菌のKochの原則が支配していたのであるが,赤痢症に就いてはこの法則があてはまらなく,赤痢の原因菌が数多くあることが明になつた。その後多くの学者の研究により,その数が次第に増加し,現在国際分類法で確認されているものだけでも,4群27型に分けられている。その外に又新しい赤痢原因菌が追加される傾向にあるし,又赤痢菌属以外の腸内細菌で,赤痢様症状を呈する菌が最近いくつか確認されるに至つた。
 赤痢菌属はグラム陰性の短桿菌で,好気性に発育し,運動がない。又芽苞の形成がみとめられない。本菌属はブドー糖を分解して,ガスを産生しないのを原則とする。マンニツトを分解するものと,しないものとがある。またごく少数の例外はあるが,炭水化物を分解した際にガスを産生しない。サリチン及びアドニツト非分解,シモンスのクエン酸培地に発育しない。尿素非分解,ゲラチンを液化しなく,Acethyl-methyl-Carbinolを形成しない(Wood's Test陰性)。乳糖を分解しないが,Sh.sonneiは長期培養すれば分解する。

赤痢と疫痢の病理解剖学的所見

著者: 嶋田博

ページ範囲:P.48 - P.52

 疫痢は古く伊東氏の研究に端を発し,之が独立疾患であるか,症候群であるかの論争を巻き起したが,現在では疫痢の大部分に赤痢菌属を検出することが出来,疫痢は一定の症候群に対する名称と考えられる様になつた。然しながら疫痢が何故に好んで小兒を犯すか,あの特徴的な症状は病原体の毒素によるのか或いは腸管内に発生した特種な物質によるのか,或いは更にこれ等の物質が如何なる機序によつて臓器や組織にある種の病変を惹起するのであろうかといつた問題に対しては,現在迄に実に多数の学説が発表されている。病理解剖学は,これ等の重要な且つ興味ある課題に対して未だ多くのものを貢献出来ないが,疫痢の概念の確立或いはその症状の発生に対して形態学的根拠を提供するものである。以下赤痢並びに疫痢に於ける主要臓器の病変を略述して御参考に供したいと思う。

赤痢の治療—保菌者の治療を中心として

著者: 長岐佐武郎 ,   斎藤誠

ページ範囲:P.53 - P.58

緒言
 昭和24年より漸増した赤痢は,昭和27年には我国の伝染病統計が始まつて以来の最高患者数の発生を示し,昨28年はやや滅少の傾向をみたが,本年にはいり再び増加の様相を明らかにし,流行の急速な終熄を期待しえない現況である。このような赤痢流行の要因は多様にわたつて存在し困難な問題を提示しているが,その開明には種々な観点から検討が要望されることはいうまでもなく,われわれはこれ等のうちで臨牀の立場から直接,間接に関係を持つと考えられる流行赤痢菌型,藥剤耐性の問題,患者,保菌者の治療に関する問題を探りあげて,これに若干の考察を加えてみたいと思う。

赤痢と手洗い

著者: 兒玉威

ページ範囲:P.59 - P.62

まえおき
 赤痢その他の消化器系伝染病予防のキメ手は,屎尿中に排泄された病原体が再び人の口は入るのを防止するためにあることはいうまでもない。それにはこれらの病原体を含む屎尿を合理的に処理して再び人の口にはいらないようにすることが根本対策であるが,それだけでは病原体にとつて大きな抜け穴が残されている。即ち用便の後始末のとき下痢便の場合は勿論普通便でも,必ずといつてよい位ちり紙を通して便が手指につき,肛門周辺にも残つてしまい,普通の簡単な手洗では完全に洗い落すことは困難である。従つてそれが赤痢の患者か保菌者であつたなら,手のふれたものは次々に赤痢菌でよごされて行く。また糞便でよごされたオムツやサルマタ等を洗たくした場合も危険は同様である。殊に現在のように赤痢の蔓延の甚だしいときには,いつどんな機会に赤痢菌が手につくかわからない。このように考えるとき手洗い運動は相変らず赤痢予防の衞生教育の花形の地位を譲ることはないであろう。

随想

思い出

著者: 志賀潔

ページ範囲:P.63 - P.64

 当時山県正雄といふ人がドイツ学校(私立)を開いてドイツ語を教えて居られた。私はある人の紹介で其学校に入学其山県先生の所でドイツ語を学びました。
 其山県先生は其時大学四年の学生でしたが先生は大学の講義を聴いてもツマランと申されてドイツ学校で学生を教えて居られたので,先生の明敏で又学生の養成に熱心であつたのは実に敬服しました。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら