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特集 赤痢(Ⅰ) 論説
赤痢の細菌学
著者: 安齊博1
所属機関: 1北里研究所
ページ範囲:P.39 - P.47
文献購入ページに移動明治29年志賀潔先生1)が赤痢患者より一細菌を分離し,赤痢原因菌として決定し,明治31年Zentralblattに発表した。次いで2年後Flexnerがフイリツピンで志賀菌と異なる病原菌を発見され,又明治36年には二木謙三先生が所謂駒込菌を報告した。それまでは,一病気一病原菌のKochの原則が支配していたのであるが,赤痢症に就いてはこの法則があてはまらなく,赤痢の原因菌が数多くあることが明になつた。その後多くの学者の研究により,その数が次第に増加し,現在国際分類法で確認されているものだけでも,4群27型に分けられている。その外に又新しい赤痢原因菌が追加される傾向にあるし,又赤痢菌属以外の腸内細菌で,赤痢様症状を呈する菌が最近いくつか確認されるに至つた。
赤痢菌属はグラム陰性の短桿菌で,好気性に発育し,運動がない。又芽苞の形成がみとめられない。本菌属はブドー糖を分解して,ガスを産生しないのを原則とする。マンニツトを分解するものと,しないものとがある。またごく少数の例外はあるが,炭水化物を分解した際にガスを産生しない。サリチン及びアドニツト非分解,シモンスのクエン酸培地に発育しない。尿素非分解,ゲラチンを液化しなく,Acethyl-methyl-Carbinolを形成しない(Wood's Test陰性)。乳糖を分解しないが,Sh.sonneiは長期培養すれば分解する。
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