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特集 勞働衞生最近の進歩
珪肺
著者: 勝木新次1
所属機関: 1労働科学研究所
ページ範囲:P.10 - P.13
文献購入ページに移動戦後のわが国における珪肺研究の勃興は,日本の労働衞生の過去数十年の経過を通じて,最も注目を惹く現象の一つであるといつてよい。この方面の研究は既に昭和の初期に欧洲の諸国にそれほどおくれないで発足し,黒田,白川,小林,大西横田,石川等の諸氏の努力によつて貴重な研究業績が積まれて来たのであるが,戦前では経営者も珪肺発生の実態の公にされることを好まなかつたし,労働者の自覚も充分でなく,又今日からみると研究調査の普及すべき技術的条件も具つていなかつた。しかるに戦後全国金属鉱山労組の指導者は,この珪肺問題の打開に非常な熱意をもつて立ち上り,労働三法の制定によつて労働省が設けられるや,政府も職業病として最も重要なこの珪肺の問題を積極的にとりあげ,経営者の認識も亦大いに昔日とは異つて来たために,本問題が急に脚光を浴びることとなり,極めて多数の研究者が本症の研究に携わることとなつた。
そして研究の第1着手として珪肺発生の現状を把握するためのX線検診が,金属鉱山をはじめ各種の産業に亘つて広汎に行われた。その結果の一部として労働省の行つた検診の成績を次にに掲げる(第1表)。
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