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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生16巻5号

1954年11月発行

文献概要

特集 勞働衞生最近の進歩

夜間作業

著者: 斎藤一1

所属機関: 1労働科学研究所

ページ範囲:P.13 - P.13

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 深夜業は鉄鋼,化学,電気産業,運輸,通信事業や医療業務等の広汎な部門で,交代制の勤務形式の下に行われている人間労働の一形態である。これが労働衞生の分野で問題とされる所以は,昼間活動,夜間睡眠という人間の自然な生活と全く逆行した時相において,労働と休眠がなされるという点から,諸々の問題が派生してくるからである。このような異常形態の生活は,人体生理機能の上にも,種々の変容を与えずにはおかない。
 体温,脈搏,血圧等の生理機能は,昼夜により規則的な変動を示すが,昼夜転倒生活では,この波動をある程度逆転させるけれども,完全には転倒せず,またこれらの日差は,夜業時には昼業時にくらべて遙かに大きく,而も夜業の日数を重ねるに従いこの日差が漸増する。大脳亢奪水準を示すと考えられるちらつき値の低下率も夜業では大きい。血清蛋白濃度に対応する血清屈折率や血清食塩濃度は一日間で昼夜により「生体潮汐現象」としての一定の律動的な波動をもつが,これは夜業昼眠により逆転するけれども,波動の振幅は通常生活時にくらべて小さく,夜業時の機能亢進と昼眠の機能沈静の効果が少いことを暗示している。また尿中各種塩類排泄量の逐時的変化の上にも夜業昼眠の影響がみられる。即ち一般に体液塩類の排泄曲線は,逆転の傾向を示すが,組織塩類は通常の排泄曲線を根強く示し,人体細胞の活動の上に昼夜に伴なう固有のリズムがあり,昼業夜眠という生活に根強い順応を示していることを暗示している。

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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