文献詳細
文献概要
特集 勞働衞生最近の進歩
最近の珪肺行政の動向
著者: 鈴木間左支1
所属機関: 1勞働省基準局衛生課
ページ範囲:P.62 - P.67
文献購入ページに移動我が国における珪肺問題の歴史を繙いて見ると大体大ざつぱに見て三つの時期を経て来たように思われる。第一は珪肺というものが近代的医学の光に照らし出されずに民間の伝承的,俗諺的な「ヨロケ」とか「ヘツペ」とかいう言葉で,一部の鉱山地方やごく特殊な地方の人々に知られ,又その地の一部の医者や識者の注意をかんきした時代,即ち明治2, 30年代頃までの喚起時代で,これは珪肺の蒙昧時代とでも呼んだらよいであろう。
明治20年代になつて,はじめて我が国においては西欧医学的な立場から珪肺について記述した文献があらわれたが,はじめは主に西欧諸国のこの方面の研究の紹介のようなものが多かつた。その内ごく特殊な先駆者達により少しづつこの方面の調査や研究が我が国でも行われて来て,第一次大戦後我が国の資本主義の爛熱につれて次第に研究等も多くなり,第1回国際珪肺会議が南阿において行はれた1930年には,我が国でも終に珪肺を業務上の疾病として認め,補賞を行うようになつた。その後第二次大戦の終了時まで珪肺に関する約70余の研究が行われ,鉱山のみならず,色々な産業に珪肺の発生が報告され,研究されて来た。しかしこの時代には珪肺問題は主として一部の有志研究家や先駆者達の努力と活動によつて行われたのであつて,一般社会のこれに対する関心も薄く,又政府もこの問題に積極的な活動と対策とを示さなかつた。
掲載誌情報