文献詳細
特集 医療制度とその盲点(Ⅰ)
文献概要
今,君達を指導,教育しつつある教官連は何れも斯界のエキスパートだから,医学の尖端を教え,最新の研究主流を指向してくれる。だから,君達の生活には日々の進歩がある。進歩あるところ必ず愉快が伴う。それがだ,一たび実社会へ出て,実際の診療面に携わるという事になると,これは又,大した方向転換を要求せられるのだ。たとえ,それが君達の習得した医学知識を善用し,君達の良識の命ずるところに従つて行つた診療であつても,社会保険医療制度,それが又現在国民医療の80%を占めるまでに立到つている。この制度に於ては,一定の枠があつてね,その埒外に出ると,事の善惡は別として,許容されないのだ。「診療に節制を守られたし」という通牒が来る。それがたび重なると所謂「お呼び出し」があつて専門知識のない若僧官吏から,お叱りを蒙つて,請求報酬を削減された上始末書を取られけりだ。
こうなると,医学の進歩に立遅れまいと,新らしい文献を読んだり,学会へ出たりして勉強することは,もう実生活とは全然遊離して終う。医師免許証を貰つたばかりのホヤホヤも,医師生活30年の練達の士も診療報酬は同点なのだからね。
こうなると,医学の進歩に立遅れまいと,新らしい文献を読んだり,学会へ出たりして勉強することは,もう実生活とは全然遊離して終う。医師免許証を貰つたばかりのホヤホヤも,医師生活30年の練達の士も診療報酬は同点なのだからね。
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